乳がんホルモン療法の悩み③女性ホルモンと関節の症状の関係
朝起きると手がこわばっている。
少し動かすと楽になる。
同じ姿勢でいると関節が固まってしまい、油をささないと動かないような感じがする。
このような症状は、乳がんのホルモン療法中によくみられる副作用の一つです。
一方で、年齢のせいだから、と我慢している方も少なくありません。
今回は、ホルモン療法による関節症状(Aromatase Inhibitor-Associated Musculoskeletal Symptoms:AIMSS)の特徴と、ご自身でできる対策についてご紹介します。
ホルモン療法でなぜ関節が痛くなるの?
乳がんのホルモン療法、特にアロマターゼ阻害薬は、体内の女性ホルモン(エストロゲン)を大きく減少させます。
エストロゲンには、
- 関節や腱の柔軟性を保つ
- 炎症を抑える
- 軟骨や骨の健康を維持する
働きがあるため、その量が減ることで
- 手指のこわばり
- 関節痛
- 腱鞘炎
- ばね指
などが起こりやすくなります。
朝が一番つらい のが特徴
ホルモン療法による関節症状には特徴があります。
✅ 朝起きたときに手がこわばる
✅ 少し動かすと楽になる
✅ 長時間同じ姿勢でいるとまた固まる
✅ 動かさないとかえって痛みが強くなる
患者さんからは
「関節に油をささないと動かない感じです。」
と表現されることもあります。
これはホルモン療法中の方によくみられる症状です。
痛みを和らげるためにできること
① 少しずつ体を動かす
実は一番大切なのは、
「痛いから動かさない」ではなく、「無理のない範囲で動かす」ことです。
おすすめは
- 朝起きる前に手をグーパーする
- 手首をゆっくり回す
- 指を一本ずつ曲げ伸ばしする
だけでも関節が動きやすくなります。
朝、起きたときに、いきなり動かずにベッドの上で伸びをしたり、ストレッチをしてみましょう。
痛みや一日の疲れで硬くなった筋肉をほぐすのも大切。夜寝る前やお風呂の後は、大の字になって、意識的に体をリラックスさせてみましょう。
緊張やストレスが強いという方は、口を開けて奥歯の嚙み締めを緩めたり、痛みを感じるところへ息を送り込むように深呼吸するのもお勧めですよ。
② ウォーキングなどの有酸素運動
適度な運動は
- 関節の柔軟性
- 血流
- 筋力
を保つことが分かっています。
週150分程度のウォーキングでも十分効果が期待できます。毎日少しずつ通勤や犬の散歩で歩くのでもよいと思います。
③ 筋力トレーニング
筋肉が減ると関節への負担が大きくなります。
軽い筋トレやゴムバンド運動などを取り入れることで、痛みの改善につながることがあります。
膝の悪くない方はスクワットで下半身を強くしたり、身体を大きくねじったり動かす動きがある、ラジオ体操もお勧めです。
④ ビタミンD
ビタミンDが不足している方では、補充によって関節症状が改善する可能性が報告されています。
気になる方は主治医に相談してみましょう。
⑤ エクオールを試してみる
そして、近年注目されているのがエクオール。
エクオールは大豆由来の成分で、女性ホルモンに似た穏やかな働きをします。
更年期症状だけでなく、
- 手指の痛み
- こわばり
- メノポハンド
の改善が期待されています。
エクオールについては、もう少し詳しく次回お伝えします。
⑥ 痛みが強いときは薬を使うことも
症状によっては
- 消炎鎮痛薬(NSAIDs)
- 湿布
- アセトアミノフェン
などを使用することもあります。
また、症状が強い場合には、少し休薬したり、ホルモン療法の種類を変更することで改善するケースもあります。
自己判断で治療を中止せず、まずは主治医に相談しましょう。
その痛み、本当にホルモン療法のせい?
ホルモン療法中だからといって、すべての痛みが薬の副作用とは限りません。
例えば、
手の痛み
- 関節リウマチ
- へバーデン結節
- 母指CM関節症
- 手根管症候群
などが隠れていることがあります。
肩の痛み
- 腱板断裂
- 五十肩(肩関節周囲炎)
- 石灰沈着性腱板炎
股関節の痛み
- 変形性股関節症
- 腰椎疾患による関連痛
膝関節の痛み
- 変形性膝関節症
- 半月板損傷
- 関節リウマチ
- 痛風・偽痛風
などが原因の場合もあります。
ホルモン療法だから仕方ない と決めつけないことが大切です。
痛みが強い場合や、片側だけに強い症状がある場合、腫れや熱感を伴う場合は、整形外科や必要に応じてリウマチ専門医の診察を受けることをおすすめします。
我慢しすぎないことが治療継続につながります
ホルモン療法は、乳がんの再発を防ぐためにとても大切な治療です。
しかし、関節の痛みやこわばりがつらくて、薬を飲み続けることが苦痛になってしまう方もいらっしゃいます。
痛みを我慢することが目的ではありません。
運動療法やストレッチ、エクオールなどのセルフケアを取り入れながら、必要に応じて整形外科や主治医と連携し、無理なく治療を続けることが大切です。
関節は、一生付き合っていく大切なパートナーです。
年齢やホルモンの変化によって不調が現れることはありますが、適切なメンテナンスを続けることで、痛みを和らげ、毎日の生活をより快適に過ごすことが期待できます。
「ホルモン療法だから仕方ない」「年齢のせいだから」と我慢せず、気になる症状があればお気軽にご相談ください。乳がん治療を続けながら、その人らしい生活を送れるようサポートすることも、私たちクリニックの大切な役割だと考えています。
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