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乳房は乳腺組織、脂肪組織、皮膚、血管などから構成されています。マンモグラフィは乳房のレントゲン撮影ですが、X線が通りにくい乳腺組織は白く、通りやすい脂肪組織は黒く写ります。 一方、しこりなどの病気も乳腺組織と同じように白く写ります。そのため、雪原のウサギや雪山の雷鳥の様に、しこりなどの病変が正常の乳腺に隠れてしまい、乳がんなどの病気が見つけにくくなる場合があります。マンモグラフィは良い検査ですが、全ての乳がんを見つけることはできないのです。
乳腺の濃度は、年齢や人種によって、また妊娠・授乳の影響でも変化します。日本人は欧米人に比べて、若い方は高齢者に比べて相対的に乳腺濃度が高い方が多いことが知られています。 乳腺の組織の割合の多い方(高濃度乳房と呼ばれています)では、白い部分が多い写真になり、病変が検出されにくい可能性があります。
乳房の構成は、乳房内の乳腺組織と脂肪組織の割合により以下の4つに分類されます。
このうち、不均一高濃度と極めて高濃度を併せて「高濃度乳房(デンスブレスト)」と呼びます。
残念ながら、乳腺濃度が高い方に対してどのような検査(超音波検査やMRI検査など)がいいのか、といったことはまだ結論が出ていません。費用や検査の簡便性などから、当院では、超音波検査の追加を勧めています。
高濃度乳房であっても、マンモグラフィが早期発見に大きく役立つケースもたくさんあります。例えば、超音波検査で見つけることが難しい「石灰化」「構築の乱れ」で見つかる乳がんの発見はマンモグラフィが優れています。超音波検査の併用をお勧めしています。検査の精度が高まり、見落としの可能性を減らし乳がんの早期発見につなげることが期待できます。
注意が必要なのは、高濃度乳房が中程度のがんリスク因子である点です。がんの発生との関連はまだはっきりとわかっていません。高濃度乳腺自体は異常ではありませんので、セルフチェックを定期的に行い、検診をしっかり受けていれば心配しなくても大丈夫です。 乳房の構成の違いはその方の個性のようなもの。高濃度乳房は珍しいことでも、病気でもありません。機会があれば、ぜひご自身のマンモグラフィを見てみて下さい。
日本乳癌学会HP 対策型乳がん検診における「高濃度乳房」問題の対応に関する提言.pdf