マンモグラフィとエコー、どっちがいいの?
乳がんは、日本人女性が最もかかりやすいがんで、9人に1人が乳がんになるといわれています。30代後半から増加し、40代から60代に罹患率のピークがありますが、70代、80代まで幅広い年代の方がかかる病気です。
日本では、40歳以上の女性に2年に1回、マンモグラフィ検診が勧められています。一方、健診施設で、「高濃度乳房」なので、エコー検査を勧められたという方や、マンモグラフィは痛いからほかの方法はないかな?という方もいるのではないでしょうか?
当院で検診を受ける方からも、「マンモグラフィとエコー、どっちを選べばいいの?」という質問を良く受けます。
実際に、どちらも乳がんの早期発見に役立ちますが、それぞれに得意・不得意があります。マンモグラフィとエコーの違いについて知っておきましょう。
マンモグラフィとエコーの違い
マンモグラフィ | エコー(超音波検査) | |
---|---|---|
検査方法 | X線を使って乳房を撮影する | 超音波を使って乳房内部を観察する |
痛み | 乳房を圧迫するため、痛みを感じることがある | 痛みはほぼない |
得意なこと | 微細な石灰化、乳房全体の構造のゆがみを見つける | 乳腺が発達している方での小さな腫瘤(しこり)を見つける、乳管の中の変化を見る |
苦手なこと | 高濃度乳房ではがんを見逃す可能性がある | 石灰化の検出が苦手 |
放射線被ばく | あり | なし |
マンモグラフィは、乳がん検診で最もよく行われる乳房のX線検査です。乳房を圧迫し薄くすることで、放射線被ばくを減らしつつ、良い画像が得られます。触ってもわからない腫瘤(しこり)や石灰化を見つけるのに役立ちます。しかし、乳腺の発達した方(高濃度乳房)では、がんが乳腺に隠れて見えにくくなることがあります。
マンモグラフィ検査の被ばくを気にされる方も多いのですが、私たちは日常生活でも宇宙からの放射線を浴びています。マンモグラフィ検査での被ばくは、日本とアメリカを飛行機で1往復したときに浴びる放射線量と同じくらいといわれています。被ばくによるリスクは軽微と思われ、検査を受けるメリットの方が大きい方が多いと思います。
一方、乳腺エコー(超音波検査)は、痛みや被ばくの心配がなく、乳腺の密度が高い人のしこりを見つけやすい検査です。検診での有効性は検証中ですが、マンモグラフィと併用することで、より多くの乳がんが見つかるとされています。ただし、検査をする人の技量によって精度が左右されやすいことや、精密検査が必要になる割合が高くなるデメリットもあります。
乳房の大きい方は、マンモグラフィ検査では全体像が見やすいのですが、エコー検査では、超音波が届かない深いところが見えにくいことがあります。
妊娠中の方は、乳腺が発達していることと、放射線被ばくの影響を考慮し、エコー検査が推奨されます。 どうしてもマンモグラフィが必要な場合は、防護処置をして慎重に行います。
乳房にシリコンバッグが入っている場合、当院では、 マンモグラフィ検査はあまりお勧めしていません。 バッグの状態によっては圧迫による破損のリスクもゼロではないためです。必要な場合は、シリコンを押しのけて乳腺部分を マンモグラフィを撮影します。
どちらを選べばいい?
乳がんのリスク、年齢や乳腺の状態によって適した検査が異なります。
① 40歳以上の人
- 40歳以上では、マンモグラフィが乳がん検診の基本とされています。
- 科学的なデータで乳がんの早期発見・死亡率の減少に役立つことが分かっているため、まずはマンモグラフィを受けるのがおすすめです。
- 乳がんのリスクの高い方は、マンモグラフィ+エコーの併用検診をお勧めしています。
- 高濃度乳房(デンスブレスト)の場合は要注意! 日本人女性の約40〜50%は高濃度乳房であり、このタイプの乳房ではマンモグラフィの感度が下がることがあります。マンモグラフィだけでは見逃しの可能性があるため、エコーも受けると安心です。
② 40歳未満の人
- 若い女性は乳腺の密度が高いため、マンモグラフィのみでは乳がんが見えにくいことがあります。
- 40歳未満の人には放射線被ばくの影響も考慮する必要があります。
- エコー検診を基本として、必要に応じてマンモグラフィの追加をお勧めしています。
③ 【年齢によらず】乳がんのリスクが高い人、より精度を高めたい人
- 家族歴がある人 遺伝的に乳がんリスクが高い場合、両方の検査を受けることで早期発見の精度が上がります。
- より精度を高めたい人 しっかり調べておきたい方、高濃度乳房の方は、マンモグラフィ、エコーで総合的な検査をお勧めします。
検診のメリット・デメリットを理解しよう
乳がん検診の最大のメリットは、乳がんを早期に発見できることです。早期に見つかれば、治療の選択肢が広がり、治癒の可能性が高くなります。
しかし、どんなに良い検査でも乳がんを100%見つけられるわけではないことも知っておく必要があります。
また、検診には次のような側面もあります。
✔ 費用や時間がかかる
✔ 検査結果を待つ不安がある
✔ マンモグラフィは被爆がある、痛みを伴うことがある
✔ エコーは精度が医師・技師の技量に左右される
こうしたメリット・デメリットを理解し、自分に合った検診を選ぶことが大切です。
まとめ:どちらかではなく、適切に使い分けることが大切
マンモグラフィとエコーは、それぞれ異なる特徴を持っています。
「どっちがいいの?」ではなく、「どちらも良い検査」。
自分の乳がんのリスク、年齢や乳腺の状態に応じて使い分けることが重要です。
何歳ぐらいから、どのような検査を、どのくらいの頻度で受けるべきなのかは、医師と相談しながら決めるのがベストです。
また、検診を受けることがゴールではなく、自分の乳房の状態に気を配り、変化があればすぐに受診することが大切です。これからもご自身の乳房を気にかけ、気になることがあればいつでもご相談ください。
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