乳がん検診で要精密検査となったら④マンモグラフィーの「局所性非対称陰影(FAD)」
乳がん検診のマンモグラフィの結果で「局所性非対称陰影(FAD: Focal Asymmetric Density)」を指摘されることがあります。これは、左右を比べると非対称に見えて、病変の存在が疑われる影のこと。
初めて聞いた方は「がんの可能性があるの?」と不安になるかもしれません。
FADの意味や乳がんとの関連性、デンスブレスト(高濃度乳房)との関係について、解説します。
局所性非対称陰影(FAD)とは?
レントゲン(X線)検査では、X線の通りやすさによって、白く写る部分と黒く写る部分ができます。例えば、骨はX線を通しにくいので白く、脂肪はX線を通しやすいので黒く写ります。
マンモグラフィは、乳房のX線検査です。乳房の中の正常な組織のうち、乳腺やリンパ節、筋肉、血管などは白く、脂肪は黒く写ります。
乳がんや良性の腫瘍は、X線が通りにくいため、白く写ります。
私たち医師は、左右の乳房を比較して白いところがないかマンモグラフィーを見ていきますが、乳房は完全に左右対称ではありませんので、左右全く同じように見える方はいません。どなたでも非対称な影は見られますが、単なる左右差ではなく、片側に局所的に特定の部位だけが白く濃く見えることをFADと呼んでいます。
FADには判断基準があります。乳腺の少ない部位に見られるかどうか、周囲との濃度(白さ)の違いや境界の見え方はどうか、などを検討して判定します。これらの判断基準に基づき、正常な組織の影かもしれないが、病変が隠れているかもしれない、という場合は、FADと考えて、精密検査が必要になります。
FAD=乳がん?それとも良性の変化?
FADが見つかったからといって、すぐに「乳がん」とは限りません。
実際には良性の変化であることが多いです。
FADの原因として考えられるものには、乳がん以外に以下があげられます。
①正常な乳腺の重なり(特にデンスブレストの方に多い)
② 加齢やホルモンの影響による乳腺の変化 乳腺は女性ホルモンが増加すると発達し、減少すると脂肪に置き換わっていきます。妊娠や授乳後、年齢を重ねると脂肪が多くなり乳腺の構成が変化してきます。その変化に伴って、左右差が目立つようになる方もいます。
③良性のしこり(嚢胞、線維腺腫など)が存在する
しかし、乳がんが原因となることもあるため、検診では要精密検査となり、追加の検査が必要になる場合があります。
FADが見つかったときに必要な追加検査
① 過去のマンモグラフィとの比較
もともと左右差が目立つところがある方では、以前の検査画像と比べて変化がなければ、経過観察となることもあります。
② 乳房超音波検査(エコー)
マンモグラフィでFADのある所を重点的に超音波検査で観察します。異常があれば、生検(組織の一部を採取して詳しく調べる検査)が行われます。
③ 再撮影や追加の圧迫撮影
きちんと乳腺を伸ばし撮影を行うとFADを認めない時もあります。別の角度から撮影したり、圧迫を加えて撮影することがあります。
④ MRI検査
原因がはっきりしない場合、MRIを行うこともあります。
デンスブレスト(高濃度乳房)とFADの関係
デンスブレスト(高濃度乳房)とは、乳房の中の乳腺の割合が高く、マンモグラフィで白く写る部分が多い乳房のことを指します。
デンスブレストの方は、正常な乳腺が重なった影がFADとして指摘されることが多いです。
また、デンスブレストではマンモグラフィだけでは乳がんを見つけにくいため、超音波検査を追加することで診断の精度を高めることが推奨されています。
まとめ FADが見つかったらどうする?
FADは乳腺の重なりや良性の変化であることが多いため、追加検査(超音波検査など)で詳しく調べることが大切です。
当院では、デンスブレストの方はFADが出やすく、また、病変が隠れてしまいがちなので、超音波検査の追加をお勧めしています。
もしマンモグラフィの結果でFADを指摘されても、すぐに不安にならず、医師の指示に従って適切な検査を受けることが大切です。
気になる方は、乳腺専門の当クリニックへ相談してくださいね!