乳がん検診で要精密検査となったら⑤マンモグラフィーの「構築の乱れ」
乳がん検診のマンモグラフィを受けた際、「構築の乱れ」と指摘されることがあります。これは、乳腺の正常な構造・流れが乱れて見える状態を指します。明確なしこりを伴わず、放射状の白い影が見られます。漫画の集中線のような感じです。
構築の乱れとは?
乳房は、母乳を作る「乳腺」や、脂肪、結合組織などで構成されています。これらは規則正しく配置されており、マンモグラフィではその構造が白と黒のコントラストで映し出されます。この整ったパターンが崩れてしまうと、「構築の乱れ」として認識されます。
「構築の乱れ」は、 がんに関連する場合と、がんではない場合(乳腺症、手術や外傷後、放射線治療後の変化など)の両方で見られます。
構築の乱れと乳がんの関係
乳がんの中には、しこり・かたまり(「腫瘤」)を作らず進行するがんがあります。
浸潤性乳管癌では、がん細胞が周囲の正常な組織を巻き込みながら広がる過程で、乳腺の構造を壊し、構築の乱れが見られます。例えば、がんの中の線維化(硬い組織に置き換わる)が進んだり、がんを取り囲む組織に線維化が起きると、周囲の組織を引き寄せるように収縮・歪みが起こります。
また、がん細胞が、正常な組織の間を這うように拡がることでも構築の乱れは起こります。浸潤性小葉がんは、乳腺の小葉(乳管の末端にある母乳を作る組織)から発生するがんです。小葉がんはがん細胞が周囲の組織に染み出すように、広範囲に広がります。乳房の形や大きさが変化することがあります。
構築の乱れに、石灰化やFAD、乳房の左右差、乳頭の凹みや皮膚の変化を伴う時はより悪性を疑います。
良性が原因の場合
構築の乱れは、がん以外の要因でも発生します。代表的なものは以下のとおりです:
・乳腺症:ホルモンバランスの影響で乳腺が硬くなり、構造が変化することがあります。
・過去の外傷や手術の影響:乳房に打撲を受けたり、過去の手術や生検の傷跡が原因で瘢痕が残ることがあります。
・放射線治療後の変化:乳がんの治療で放射線を受けた場合、乳腺組織の線維化が進み、構造が変化することがあります。
構築の乱れが見つかった場合の対応
マンモグラフィで構築の乱れが指摘された場合、追加の検査が必要になります。
①マンモグラフィの再撮影
乳房をしっかりと伸ばし再度撮影してみます。再撮影では異常はなく、正常な乳腺組織の影が重なっていただけのこともあります。
② 超音波(エコー)検査
マンモグラフィーの構築の乱れが確認できる部位を中心に調べます。 異常があれば、生検(細胞診・組織診) 疑わしい部分の組織を採取し、がん細胞があるかどうかを調べます。
③MRI検査
悪性を疑う場合は、MRIを撮影し、異常の有無を確認します。
> 乳がんの検査
まとめ 構築の乱れが見つかったらどうする?
「構築の乱れ」は、乳がんの可能性もあれば、良性の変化であることもあります。過去に乳がんの手術や放射線治療を受けた方では、がんの再発とは別に構築の乱れが見られることがあります。
大切なのは、追加の検査を受けて、原因をしっかり確認することです。マンモグラフィの結果に不安を感じたら、乳腺専門の当院へご相談ください。