乳がん治療後のケモブレインの謎②脳を元気にする習慣
「最近、うっかりミスが増えた…」「さっき考えてたことがすぐに飛んでしまう…」そんなモヤモヤを感じていませんか?
乳がん治療後、物忘れや集中力低下を経験する方は少なくありません。これは「ケモブレイン(化学療法による認知機能障害)」と呼ばれ、乳がんサバイバーの約30〜70%が経験すると言われています(Ahles & Saykin, 2006)。
でも、脳は鍛えられます!
今回は、忘れっぽさを改善、集中力を高める、計画的に行動するためのコツ、脳を活性化するゲームやアクティビティをご紹介します。
忘れっぽさを改善するには? 脳を「整理」する習慣
①メモを活用する
「メモどこ行った?」を防ぐ
そもそも、メモしたことを忘れてしまったり、メモをなくしてしまうこともあります。予定やToDoはスマホのメモアプリ、気づきや考えはノートに、とルールを決めておきましょう。
メモを記憶に「定着」させる
メモをした後に振り替えることも大切。1日1回、メモを振り返る時間を作りましょう。朝か夜がベストです。3回ルールと言って、1日後・1週間後・1か月後に見返すと、記憶が定着しやすいそうです。
記憶に「残る」メモの仕方
色分けや音声メモも便利です。赤ペンや付箋で重要な部分を強調すると、視覚的に記憶しやすいでしょう。スマホの音声メモ機能を使うと、手を使わずに記録できますね。
②日記を書く
「今日の記憶」を強化する
1日1行、短くてOKです。「今日の楽しかったこと」「印象に残ったこと」「新しいカフェを試した」など、小さなことでも「書く」ことで、1日の記憶を整理&定着できます。
「ポジティブ日記」で前向きに
1日1つ、「今日よかったこと」を書くと、脳がポジティブな記憶を優先するようになるそうです。(Lupien et al., 2009)。人生にはネガティブなことがつきものですが、それをポジティブに変えられるのは、自分自身なのです。せっかくなら、ポジティブに一日を終えたいですね。
集中力を高める! 脳を今にフォーカスさせる
①5分間の「マインドフルネス」で「今に集中する」練習をする
目を閉じて深呼吸し、「今、この瞬間」に意識を向けましょう。
このように、心が”今この瞬間”に向いている状態を「マインドフルネス」といいます。欧米では、乳がんや高血圧やうつ病などの治療にマインドフルネスを取り入れている病院も。
詳しくはコチラ→院長も実践!マインドフルネスのススメ
脳の雑音を減らすことで、集中力がアップします!
②ポモドーロ・テクニック
「ポモドーロテクニック」は、時間管理戦略のひとつ。生産性アップだけでなく、作業を分割し 1 つずつ処理していけるため、精神的な疲れも減らせます。「25分集中 + 5分休憩」のサイクル • タイマーをセットし、25分間だけ集中します。その後、5分間の休憩を挟むことで脳を疲れにくくするそうです。
③集中しやすい環境を作る
視覚的に気が散ってしまわないように、机の上は、今使うものだけを置きましょう。空き時間についついスマホを見てしまう方は、視界に入らない場所に置きましょう。
うまく計画を立てる! スケジュールをラクに管理するコツ
①「最優先」を1つ決める
「今日はこれだけはやる!」を1つ決めましょう。3つ以上のToDoを作ると、脳が混乱して手がつかなくなってしまいます。完了しないと、焦ってしまいますよね。まずは「最優先の1つ」を決め、達成したら次のことを考えてみませんか?
②逆算スケジュール
ゴールから逆算すると計画が立てやすくなります。
例えば、「来週までに報告書を作る」のなら、、、
今日は、アイデアを書き出す
明日は、1ページだけ書く
3日後は、全体を見直す
はじめは、「小さなステップ」に分けることで、自分にかかるプレッシャー、負担を減らしましょう。
③ルーティン化
「計画を立てること」を「ルーチンの計画」にしましょう!
毎朝10分、「今日の計画タイム」を作り、「何から始めるか」を決めるだけで、1日の流れがスムーズになります。夜に「明日のToDo」を書いておくと、朝すぐに行動できて時間短縮になりますね!
脳を鍛える! ゲーム&アクティビティ
①記憶力をアップするゲーム
「間違い探し」 は、短期記憶を鍛えます。「神経衰弱」 は、集中力&記憶力を向上させます。
「しりとり」 で 言葉を思い出す力を強化しましょう。
②脳を柔軟にするパズル系ゲーム
「ナンプレ(数独)」 は、 論理的思考力アップに。「クロスワード」 は、語彙力と思考力を鍛えます。「ルービックキューブ」は、空間認識能力と集中力を強化させます。夢中になると、時間を忘れてしまいますが、こういう時間が脳には大切なのかも。
③動きながら脳を活性化するアクティビティ
ダンスやリズムゲームは、音楽に合わせた動きが脳を活性化します。テレビゲームも悪くないかもしれません。 オセロ、将棋、囲碁といった、ボードゲームは、戦略を考える力を養います。
④「言葉のストレッチ」で脳を活性化
「動物の名前を10個思い出す」 「昨日食べたものを3つ挙げる」
こうしたゲームを日常に取り入れると、脳の活性化になりますよ。
私は診察の時に何を食べましたか?とか、最近、どんな運動をしましたか?と聞いています。乳がんの術後は食事や運動の管理が大切なので、それを思い出してもらいながら、こっそり頭の体操もしてもらっているのです。
おわりに:今を大切にしながら、未来の自分をサポートしよう!
乳がん治療後の「ケモブレイン」は、焦らずコツコツ取り組むことで改善が期待できます。
忘れっぽさをカバーしたり、集中力を取り戻すには、周囲の環境を整えることも大切。ぜひ周りの人にも協力してもらいましょう。
毎日の生活に小さな健康習慣を取り入れることで、脳の働きをサポートし、生活の質を向上させることができます。せっかくなので楽しみながら、今日からできることを1つだけ試してみませんか?きっと、少しずつスッキリ感が戻ってくるはずです。「今日できる小さな一歩」が、未来のあなたを助けてくれるはず。
ところで、こうした脳の変化は、乳がんの治療によらず、全ての女性が経験することなんですよ。
今日ご紹介した内容のうち、マインドフルネスや、スマホのメモの活用、スケジュール管理などは、私自身も記憶力や集中力、判断力を高めるために行なっています。
しりとりやマジカルバナナといった言葉遊びも、子どもに誘われてやっています。こうした子どもたちが大好きな遊びは、実は頭の筋トレ・ストレッチになっているんだなあと思う今日この頃です。
次回は、年齢によって私たち女性の脳に起こる変化について、お話しします。