閉経とともに変わる乳房の環境|乳がんの発生リスクを知る
最近、興味深い研究が報告されました。
University of Cambridge などの研究グループが、500人以上の正常乳房組織を解析し、
年齢とともに乳房の構造や免疫環境が大きく変化することを示したのです。
特に変化が大きかったのは、閉経前後でした。
乳房は、一生を通して変化している
実は、乳房は、
- 女性ホルモン
- 月経周期
- 妊娠
- 授乳
- 加齢
- 閉経
などの影響を受けながら、一生を通して変化し続けています。
今回の研究では、
- 細胞数の減少
- 細胞分裂の低下
- 母乳を作る“小葉”の減少
- 脂肪組織の増加
- 血管の減少
- 免疫細胞の変化
などが、年齢とともに起こることが示されました。
特に閉経前後では、ダイナミックな変化が見られるそうです。
「Seed and Soil」という考え方
乳がんというと、「遺伝子に傷がついた細胞が増える病気」というイメージがあると思います。
もちろん、がん細胞の遺伝子の変化はとても重要です。
一方で最近は、癌細胞だけでなく、周囲の“環境”も大切ではないか という研究が増えています。
癌研究には昔から、
“Seed and Soil”
(種と土壌)
という考え方があります。
癌細胞を「種」とすると、その種が育つかどうかは、
周囲の「土壌」、つまり組織環境にも影響される、
という考え方です。
最近の研究では、
- 免疫
- 炎症
- 脂肪
- 血管
- 周囲の細胞との関係
など、乳房という“環境”そのものが、加齢とともに変化していく可能性が示されています。
閉経とともに変わる免疫の環境
今回の研究で特に興味深かったのは、免疫環境の変化です。
若い乳房では、
- B細胞
- 活性化したT細胞
など、異常細胞を監視すると考えられている免疫細胞が比較的多く存在していました。
しかし年齢とともに、これらの細胞は減少していました。
また、免疫細胞と乳腺上皮細胞との距離も広がっており、細胞同士の“コミュニケーション”が減っている可能性
も示されました。
これらの変化が、実際にどの程度乳がん発生に関係するのかは、まだ研究段階です。
ただ、「年齢とともに乳房の環境が変化する」ことは、かなり確かなこととして分かってきています。
なぜ年齢とともに乳がんが増えるのか
乳がんは、50代以降で増えてきます。
これまでは主に、年齢とともに遺伝子変異が蓄積するため と考えられてきました。
それは現在でも重要な考え方です。
ただ最近は、乳房という“土壌”も変わっていくのではないか という視点が加わってきました。
つまり、
- がん細胞(Seed)
だけでなく、 - 乳房の環境(Soil)
も、年齢とともに変化している可能性があるのです。
「予防」とは、乳房の環境を整えることかも?
患者さんから、
「乳がんを予防するにはどうしたらいいですか?」
と聞かれることがあります。
完全に予防する方法は、まだありません。
ただ、
- 運動
- 適正体重
- 飲酒を控える
などが、乳がんリスクと関連することは知られています。
これは単に「健康習慣」というだけでなく、
- ホルモン
- 免疫
- 炎症
- 代謝
などを介して、乳房の環境に影響している可能性があるということが示唆されます。
「なぜ私は乳がんになったの?」
乳がんと診断された患者さんから、「どうして私は乳がんになったのでしょう」と聞かれることがあります。
とても自然な問いだと思います。
- 食事が悪かったのか
- ストレスだったのか
- 出産しなかったからか
- 忙しすぎたのか
多くの方が、“原因”を探そうとします。
でも実際には、「これが原因だった」と一つで説明できることは、ほとんどありません。
乳がんは、とても複雑な病気です
現在、
乳がんには:
- 遺伝
- 女性ホルモン
- 年齢
- 体質
- 免疫
- 偶然起こる遺伝子変化
など、多くの要素が関わっていると考えられています。
最近の研究では、健康な乳房の中にも、
年齢とともに小さな遺伝子変化を持つ細胞が現れることが分かってきました。
しかし、そのほとんどは、実際の癌にはなりません。
つまり、
“異常細胞がある”
ことと、
“癌になる”
ことは、
必ずしも同じではないのです。
「自分が悪かった」と思わないで
乳がんになると、
「もっと気をつけていれば…」
と思ってしまう方が少なくありません。
でも、乳がんは非常に複雑な病気です。
誰かが悪かったから起きる、という単純なものではありません。
だからまず、自分を責めすぎないでほしいと思います。
再発予防とは「環境を整えること」かもしれません
乳癌の治療後、
- 運動
- 体重管理
- 飲酒を控える
などを勧められることがあります。
これを、
「ちゃんとしないと再発するのでは?」
と感じると、とても苦しくなります。
そうではなく、
「体にとって良い環境を整えていく」
という考え方の方が自然かもしれません。
実際、
運動には:
- 炎症を抑える
- 免疫を整える
- ホルモン環境を改善する
などの作用があることが分かっています。
ただし、
これで再発を完全に防げる、
という意味ではありません。
繰り返しになりますが、癌は、それほど単純な病気ではないからです。
「普通に生きる」ことも大切
再発が心配で、
- 完璧な食事
- 完璧な生活
- 情報検索
に疲れてしまう方もいます。
でも、
乳はんは長い時間をかけて付き合っていくことも多い病気です。
だから、
- よく眠る
- 少し体を動かす
- 人と話す
- 美味しく食べる
ことも、とても大切だと思います。
最後に
乳がんは、単純に「悪い細胞だけ」の病気ではないことが分かってきてます。
乳房は、
- ホルモン
- 加齢
- 妊娠
- 授乳
- 閉経
によって、大きく姿を変えていきます。
そしてその変化の中で、乳がんが発生してくる。
最近は、「乳房という生態系(ecology)」として乳癌を考える研究も増えてきました。
閉経は、単に女性ホルモンが減る時期ではなく、乳房そのものが大きく作り替わる時期なのかもしれません。
そして、乳がんと診断されたあなたへ。
乳がんになったことを、
「自分のせいだった」
と思わないでください。
乳がんは、多くの要素が重なって起こる病気です。
そして最近は、「癌細胞だけではなく、周囲の環境との関係」
も重要ではないか、と考えられるようになっています。
乳がんについて考えるとき、私たちは、癌だけを見て治療をしているわけではありません。
その人の人生や、体全体を含めて、
一緒に整えていくものなのだと思っています。
がんになった理由を考えても、答えは出てこないけれども、
今日の晩御飯のメニューを何にしようか?
週末は何をしようか?
来年は?
そういうことは、自分で決めることが出来ます。
普通に生きていく、ことも大切。
もしいろいろ考えて心配になったときは、どうぞお気軽にご相談ください。
あいかブレストクリニックの特徴
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