小学生〜高校生の胸の悩み相談室|思春期に多い乳腺の変化と受診の目安をわかりやすく解説
はじめに
「乳腺外科」と聞くと、「大人の女性が受診する場所」と思われる方が多いかもしれません。
しかし実際には、小学生から高校生までの思春期のお子さん(男女問わず)が受診されることも珍しくありません。
「胸にしこりのようなものがある」
「片方だけ大きい気がする」
「痛がっている」
こうした不安で来院されるケースは、成長期にはよく見られます。本人もご家族も驚くことが多いですが、体の成長やホルモンの変化による自然な現象であることも多いので、まずは安心していただくことが大切です。
思春期の体に起こる、よくある乳腺の変化とは?
● 女の子の場合
▷ 乳腺の発達による“しこり”
思春期が近づくと乳腺が発達し始め、乳頭の下にコリコリとしたしこりのようなふくらみ、痛みを感じることがあります。初潮の前後に見られやすく、多くは自然に左右とも発達していきます。
また、小学校低学年くらいのお子さんも同じような症状で来られます。これは、本格的な思春期を迎える前に身体が準備をしていて、ホルモンバランスが変化するためと考えられます。一時的なものなので、数か月でおさまることが多いです。
▷ 左右で大きさが違う
左右差があるのはよくあることで、一時的なものがほとんどです。成長のスピードには個人差があるため、片方だけ大きくなったように見えても慌てる必要はありません。
▷ 思春期乳腺痛
「張るような痛みがある」「衣服がこすれると気になる」といった違和感や軽い痛みを訴えることがあります。これは“思春期乳腺痛”で、ごく一般的な変化のひとつです。
● 男の子の場合
▷ 思春期型女性化乳房(gynecomastia)
男の子でも、乳首の下にしこりができる・ふくらみが目立つといった症状が現れることがあります。これは思春期の一時的なホルモンバランスの変化によって起こるもので、数か月~2年くらいで自然に消えることが多いです。
恥ずかしがったり不安を感じる子も多いため、精神的なフォローも大切です。
改善しない場合は、内分泌異常の有無について検査が必要なことがあります。
良性腫瘍や炎症の可能性
思春期の乳腺変化の多くは問題ありませんが、まれに乳腺外科での検査・治療が必要なケースもあります。
● 線維腺腫(せんいせんしゅ)
10代の女の子に多く見られる良性腫瘍です。
乳房内に「ころころと動くしこり」ができるのが特徴で、痛みはないことが多いです。
経過観察で済むこともありますが、急に大きくなるなどの変化がある場合は、画像検査や手術を検討することもあります。
● 乳腺炎・膿瘍(のうよう)
小さな傷や打撲がきっかけで、乳腺に炎症が起こることがあります。
赤く腫れて熱を持ったり、強い痛みや膿(うみ)が出る場合は、抗生物質や切開が必要になることもあるため、早めの受診が重要です。
乳頭の湿疹について
思春期のお子さんで、乳頭やその周辺にかゆみ・赤み・乾燥などの症状が見られることがあります。これは「乳頭湿疹」と呼ばれる皮膚のトラブルです。
- 主な症状
乳頭や周囲の赤み、かゆみ、皮膚の乾燥、痛みや違和感を伴うこともあります。 - 原因
乾燥や衣服の擦れ、汗、石鹸などの刺激のほか、アトピー性皮膚炎やアレルギー体質が関係している場合があります。また、ホルモンバランスの変化が影響することもあります。
放置すると痛みが悪化したり、感染の原因になることもあるため、早めに皮膚科や乳腺外科で診察を受けることをおすすめします。当院ではお子さんの皮膚の状態も丁寧に確認し、安心して受診できる環境を整えています。
プロテインやサプリメントとの関係は?
スポーツや美容目的でお子さんがプロテインやサプリメントを摂取しているケースもありました。
● 気をつけたい成分例
- 大豆イソフラボン:女性ホルモンに似た働きがあるため、摂りすぎには注意
- 筋肉増強系サプリ:ホルモンバランスに影響を与える可能性あり
「サプリを飲み始めてから胸が張るようになった」「しこりができたのはプロテインの影響では?」と心配される方もいます。自己判断での使用は控え、気になる変化があれば医師に相談しましょう。
当院での診察について
当院では、小学生・中学生・高校生の思春期の症状にも日常的に対応しています。
- すべて女性スタッフ(医師・技師)が対応
- エコー(超音波検査)は痛みがなく、安心して受けられます
- お子さんの気持ちを大切にしながら、ご家族にも丁寧に説明
- 男の子の受診時も、羞恥心・プライバシーに最大限配慮します
診察について
当院では、思春期の体やこころの不安に寄り添う診療を心がけています。
検査が必要な場合も、年齢や発達段階に応じて、無理のない方法を選びます。
「こんなことで受診していいのかな?」
「胸のことって、ちょっと恥ずかしい…」
そんなふうに思っている方も多いと思います。
でも、実際にはあなたと同じような気持ちで受診している人がたくさんいます。
誰にも言えなかった悩みを、そっと話してみませんか?
私たちは、あなたの話を丁寧に聞き、無理のない方法で一緒に考えることを大切にしています。
受診者のほとんどが女性のため、男性の方は、受診の時間を調整しています。LINEか電話でお問い合わせください。
当院では原則として、未成年者(18歳未満)の方が受診される際は、保護者、法律上の代理人、同行者として当クリニックが認めた方などの同伴をお願いしております。
受診される方へ 〜ひとりで悩まないで〜
乳房のことはとてもデリケートな話題です。
家族にも相談しにくくて、一人で抱えている方もいると思います。
でも、体のことは「自分のことだからこそ」、一人で抱え込まなくて大丈夫。
不安なままにせず、受診して話をすることは、とても勇気のある行動です。
できれば、保護者の方と一緒に来ていただけると、安心して診察を受けられます。
一緒に話を聞いてくれる大人がそばにいることで、必要な検査や説明がスムーズに行えます。
どうしても「親には言いにくい」「一人で行きたい」と感じている場合でも、受診することだけでも伝えておくと、あとで安心できることがあります。
受診は「自分のからだを大切にしようとしている」こと。私たちはその気持ちを大切にします。
保護者の方へ
乳房のしこりや違和感を訴えて当院を受診されるお子さまが増えています。
インターネット上でたくさんの情報が得られるからかもしれません。
思春期の体の変化は個人差が大きく、特に乳房の左右差や発達のスピードにはばらつきがあります。
多くは成長に伴う生理的な変化ですが、中には線維腺腫や乳腺炎、乳輪下膿瘍など、医療的な対応が必要なケースも見受けられます。
当院では、必要に応じて超音波検査などを行い、適切な評価と説明を行っています。
診察や検査の際に、保護者の方のご同席があると、より丁寧な情報共有が可能になります。
ただし、ご本人が希望される場合には、プライバシーに配慮して一人で診察を受けることも可能です。
ご本人の気持ちを尊重しつつ、必要に応じてご家族へご連絡を取らせていただくことがあります。
どうぞご理解・ご協力をお願いいたします。
おわりに
思春期の乳房の変化は、見た目や感覚の違いに敏感になる時期だからこそ、不安も大きくなりがちです。
少しでも「気になる」「おかしいかも」と思ったら、お気軽にご相談ください。
医学的には問題のないケースがほとんどですが、だからこそ「安心できる診察環境」で「専門的な視点」から確認しておくことが大切です。
乳腺のことなら、大人も子どもも、安心して話せる専門クリニックとして、私たちが丁寧に対応いたします。