乳がん検診で要精密検査となったら⑥エコー検査の「腫瘤」
乳がん検診で超音波(エコー)を受けた際に「腫瘤(しゅりゅう)」があると言われると、多くの方が「これは乳がん?」と不安になると思います。でも、エコーで見つかる腫瘤のすべてが悪性(がん)というわけではありません。今回は、エコーで見られる腫瘤について、わかりやすく解説します。
腫瘤とは?
腫瘤とは、乳腺の中にできる「しこり」のことです。エコー検査では、黒っぽい影がかたまりのように見えます。この「腫瘤」の形や大きさ、周囲との境界、内部の様子を観察し、それが良性か悪性か判断していきます。
良性の腫瘤(がんではないもの)
エコーで良性と考えられる腫瘤の特徴は、以下のようなものです。
・形がきれいで、丸みを帯びている、楕円形をしている
・周囲との境界がはっきりしている
・内部が黒い(液体成分を含む)、内部が均一
代表的な良性の病変には以下のものがあります。
・嚢胞(のうほう):液体がたまった袋のようなもの。乳腺の細胞が女性ホルモンの影響で出す分泌物がたまっているもの。
・線維腺腫(せんいせんしゅ):若い女性に多い、丸いしこり。良性なので経過観察することが多い。
・乳腺症:ホルモンの影響で乳腺が硬くなる状態で、しこりのように見えることがある。
これらは基本的に乳がんとは異なりますので、定期的な経過観察だけで十分なことがほとんどです。
悪性の腫瘤(がんの可能性があるもの)
エコーで乳がんを疑う腫瘤には、次のような特徴があります。
・形がいびつ(丸くない、ギザギザしている)、縦長である
・境界がぼやけている
・内部が不均一で、白黒が混じっている
・腫瘤の後ろが暗く影になる
・過去の検診データと比べて形が変化している、大きくなっている
このような特徴がある場合は、精密検査が必要になることがあります。
エコーで「腫瘤」が見つかったときに必要な追加検査
乳がん検診では、腫瘤の形、中の構造、周囲との境界、サイズによって、精密検査を要するかどうかの判断基準が決まっており、それに則って判定します。
基本的に、小さく形のきれいな腫瘤は、良性と判断しこれ以上詳しい検査は行いません。
検診結果には、「腫瘤」と記載し、精密検査不要と判定する施設もありますし、 「のう胞」「線維腺腫」など、推定される良性の病変を記載し、精密検査不要と判定する施設もあります。
良性を疑うが少しでも悪性を否定できない場合は精密検査となり、追加の検査で慎重に判断します。
① 過去のエコー画像との比較
以前の検査画像と比べて変化がなければ、経過観察となることもあります。
② マンモグラフィ
マンモグラフィで所見がないか確認することがあります。
③ エコーの再検査、エラストグラフィーやドプラ検査の追加
エコーは検査をする人の技量の差が出やすく、精密検査の割合が増えると言われています。精密検査の施設では、経験を重ねた検査技師、医師が再度評価します。血流や硬さの情報も参考にします。
④生検
異常があれば、生検(組織の一部を採取して詳しく調べる検査)を行い診断をつけることがあります。
④ MRI検査
原因がはっきりしない場合、MRIを行うこともあります。
まとめ エコーで腫瘤が見つかったらどうする?
最近は、乳がん検診でエコー検査を受ける方が増えてきました。 エコーで「腫瘤がある」と言われても、それがすぐに乳がんを意味するわけではありません。 嚢胞や線維腺腫など、良性の場合も多いからです。「腫瘤=乳がん」と思い込まず、医師の説明を聞きながら、必要な検査や経過観察を受けることが大切です。
悪性の疑いがある場合は、追加検査(マンモグラフィや生検など)を行う必要がありますので、その体制が整った専門の施設で、経験のある医師の判断を受けましょう。
過去のデータと比較することも重要ですので、精密検査で異常がなくても経過観察は継続しましょう。
当院では、乳腺の専門知識と経験のあるチームで乳がん早期発見に取り組んでいます。
結果に不安がある方は、乳腺専門の当クリニックへ相談してくださいね!