『乳がんかも』と言われたら… カテゴリー・クラス・ステージの違いを整理
乳がんの診断や検査の結果を聞くと、「ステージ」「クラス」「カテゴリー」 など、いろいろな専門用語が出てきますよね。
「これってどう違うの?」と混乱している方も多いのではないでしょうか?
実は、それぞれ意味がまったく違います!
わかりやすく整理していきましょう。
① 乳がんの「ステージ」= 進行度を表す
「ステージ」は、乳がんがどれくらい進んでいるかを表すもの です。
乳がんが確定した後、がんの大きさ・広がり・ リンパ節への転移、他の臓器への転移 の有無をもとに「ステージ(病期)」が決まります。
これは日本の「乳癌取扱い規約」に基づき、TNM分類(T:腫瘍の大きさ、N:リンパ節転移、M:遠隔転移)を組み合わせて決定されます。
ステージは、大まかに0〜5の5段階へ分けられます。私たちは、ローマ数字でカルテに記載することが多いです。
乳がんのステージ分類(病期分類)
• ステージ0:「がん細胞が乳管や小葉の中にとどまっている状態(非浸潤がん)」
• ステージ I(1):「しこりは2cmより小さく、わきのリンパ節に転移なし」
• ステージII(2):「しこりが2cm以上大きめ or わきのリンパ節に少し転移」
• ステージIII(3):「しこりがかなり大きい or リンパ節転移が多い、広い範囲」
• ステージIV(4):「骨、肺、肝臓など遠くの臓器に転移している」
ステージII・IIIはさらに細かく分類されていて、がんの大きさやリンパ節転移の状態によって決まります。
腋の下・鎖骨の上下・胸骨近くのリンパ節に転移が広がっている
「リンパ節への転移が多く、広範囲に広がっている」
どのステージでも、適切な治療を受けることで治療の選択肢はあります。
大切なポイント!
ステージは、がんが確定診断された後に決まるもの なので、乳がん検診や細胞診の時点では「ステージ◯です」とは言いません。
② 細胞診クラス = 取った細胞の「がんらしさ」を表す
しこりが見つかったとき、細い針を刺して細胞を取る「細胞診」という検査をすることがあります。
この検査では、採取した細胞を顕微鏡で見て、がんの疑いの強さ をクラス(class) I~V で分類します。
• クラス I・II:正常あるいは良性「がんの心配なし」
• クラス III:鑑別困難「ちょっと怪しい」
• クラス IV:悪性の疑い「がんの可能性がかなり高い」
• クラス V:悪性「ほぼ間違いなくがん」
大切なポイント!
クラス IIIは、「 がん確定」ではなく、あくまで「疑い」の話なので、焦らず医師と相談しましょう。 組織検査などの追加の検査を行う場合もあれば、厳重なフォローに留める場合もあり、ケースバイケースです。
クラス IV、Vは、組織検査を行う方が良いでしょう。
③ 乳がん検診の「カテゴリー」= 画像検査の結果を表す
乳がん検診(マンモグラフィや超音波検査)の結果は、日本乳がん検診精度管理中央機構(精中委)の「カテゴリー分類」で評価されます。
撮影した画像の異常の有無 によって カテゴリー1~5 に分類されます。
• カテゴリー1:「異常なし!次の定期検診」」
• カテゴリー2:「良性(問題なし)。良性の石灰化、嚢胞や線維腺腫などはあるが、次の定期検診へ」
• カテゴリー3:「おそらく良性だが、悪性(がん) の否定はできない。経過観察か精密検査を考える」
• カテゴリー4:「がんの可能性あり!精密検査が必要」
• カテゴリー5:「がんの可能性がかなり高い!精密検査が必要」
大切なポイント!
検診の画像検査結果で、カテゴリー3以上は精密検査をすすめられます。
カテゴリー3は「ほぼ良性だけど念のため」 という位置づけなので、すぐに大きな心配をする必要はありません。とはいえ、悪性の否定は出来ないため、判定が要精密検査であれば、専門医を受診しましょう。
カテゴリー4・5は必ず専門医のいる施設での精密検査が必要 ですが、「がん確定」ではなく、あくまで「可能性が高い」ということ。追加の画像検査、細胞診や組織診などを行います。最終的な診断はこれらの検査の結果で総合的に判断します。落ち着いて検査を受けましょう。
検診カテゴリーと診断カテゴリー
厳密に言うと、「カテゴリー」には 検診カテゴリー と 診断カテゴリー の2種類があります。
検診カテゴリー は、乳がん検診の結果を評価する指標です。上記に示すとおり、精密検査が必要か否かを決めるための分類です。
検診で「カテゴリー3以上」となった場合、精密検査機関でより詳しく検査を行います。 診断カテゴリーは、検診で異常が見つかり、精密検査を受けた人に対して使います。
精密検査(マンモグラフィや超音波検査)をもとに、がんの可能性や治療方針を決定します。
診断カテゴリーの決め方
- カテゴリー1, 2:問題なし、通常の経過観察
- カテゴリー3:悪性の可能性は低いが念のため、短期間で再検査
- カテゴリー4, 5:悪性の可能性あり、生検を実施
考え方は、概ね検診カテゴリーと同じですが、 今後の方針として、経過観察で良いか、細胞診や組織診を行うべきか、の判断を伴います 。診断結果が治療の方針を左右するため、責任の重い判断となります。 私たち専門医は、マンモグラフィとエコーの所見を総合的に考えたり、過去の画像との比較、臨床情報などを加味して、カテゴリーの分類を慎重に行っています。
まとめ
ステージは「乳がん確定診断後の病気の進行度」、クラスは「細胞診をした時の顕微鏡で見た細胞のがんの疑いの強さ」、カテゴリーは「マンモグラフィ やエコーなどの画像検査の時点での異常の程度、悪性の可能性の程度」を示します。
これらの分類を正しく理解することで、検診結果や医師の説明をより納得して受けることができるでしょう。
使い方ですが、、、例えば、私たちはこのようにカルテに記載します。
「乳がん検診でマンモグラフィーを受けたところカテゴリー3で、要精密検査となった。
精密検査機関で、マンモグラフィーと超音波検査を受けたところ、診断カテゴリー3の判断となり、経過観察となった。」
「乳がん検診でエコー検査を受けたところカテゴリー3で要精密検査となった。
精密検査機関でマンモグラフィーとエコー検査を受けた。診断マンモグラフィは異常なかったが、診断超音波検査のカテゴリー4の判断となり、細胞診を受けたところ、クラスIVで悪性が疑われる結果。今後さらに検査を予定している」
「よくわからない…」「結果が不安…」 そんなときは当院へ!
担当医も丁寧にご本人に説明していると思うのですが、専門用語はカタカナが多くて難しいですね…。
しかも、「乳がんかも?」と言われたら、動揺してしまい、なかなか頭に入ってきませんよね。
検診や、細胞診の結果が気になるとき、「これってどういうこと?」と不安になったときは、ぜひ当院にご相談ください。
乳腺専門の医師と、経験豊富なスタッフがしっかりサポートします。
「ただの心配で行っていいのかな…?」なんて思わず、安心していらしてくださいね!
参考に
乳がんの検査 クリニックHPでの説明
ガイドライン目次 | 患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版 乳癌学会のHP
Q15 乳がんのステージとステージごとの治療の流れについて教えてください | ガイドライン目次 | 患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版