リンパ浮腫は怖くない!今日からできるセルフケア
先日、リンパ浮腫に関するイベントを開催しました。
さまざまな立場の方からいただいた疑問や悩みに、専門セラピストの村松さんが丁寧に答えてくださり、とても充実した時間になりました。
「忙しいから後回し」――そんな日もあります。でも、リンパ浮腫は、待ってはくれません。
自分を大切にするために知っておきたいリンパ浮腫ケアの基本について、イベントの内容をまとめてお伝えします。
リンパ浮腫とは?
リンパ浮腫は、がんの手術後や放射線治療後に起こることが多いのですが、実はがん以外の病気でも発症する可能性があります。リンパ液の流れが悪くなり、腕や足にたまることでむくみが起こります。
一度発症すると完治は難しく、一生付き合っていく必要がある病態です。少し無理をしたことによって、今出来たことが近い将来にやりにくくなるのがリンパ浮腫の問題です。
乳がん術後・上肢リンパ浮腫のセルフケア
乳がんの手術で脇のリンパ節を切除すると、リンパ浮腫のリスクが高まります。放射線治療によってもリスクが高くなります。センチネルリンパ節生検を受けた方も、リンパ浮腫のリスクはゼロではありません。
浮腫んでしまったリンパ液は、切除したリンパ節の周囲に流すのが基本です。
ただし、切除されたリンパ節はもともと大きな役割を果たしていたため、流れきれず滞りやすくなります。
そこで、浮腫のある反対側の脇のリンパ節や同じ側のソケイリンパ節(足の付け根のリンパ節)へ流すようなセルフドレナージが勧められています。
先日のお話で、1番のポイントは、皮膚を柔らかくすること!
リンパ液は皮膚のすぐ下を流れているため、皮膚が硬いとリンパ液も流れにくくなります。
リンパ浮腫を放置すると硬くなってしまい、セルフケアが難しくなります。リンパ液の中には老廃物が含まれています。リンパ浮腫が進むと、浮腫みは取れず脂肪が蓄積し、皮膚が硬いまま、もとに戻らなくなります。
普段はむくみ部分をやさしく揺らして柔らかくしてから、セルフドレナージ(リンパ液を流す手技)を行いましょう。「正しく」行う必要はなく、難しく考えなくても大丈夫です。
日頃のスキンケアも大切ですよ!
リンパ浮腫に早く気づくために
実は、手の甲が浮腫む、手首が太くなると気づいた時点では、すでにリンパ浮腫はかなり進行していることが多いそうです。
初期の段階では、腋の周囲にリンパ液が溜まり、皮膚の違和感や腕の重さ、チクチク感として現れることもあります。
リンパ浮腫は切除したリンパ節の周囲から徐々に始まり、脇の周辺から二の腕の方へ広がって行きます。ですから、「わたしは全然大丈夫」と思っていても、腋窩の周りにはリンパ液の溜まりがあることがほとんどとのこと。
これが生活習慣の動きなどによって上手く流れていれば、上記のような症状は起こらず、リンパ浮腫にならずに過ごせているという事だそうです。
浮腫みに対処してくれるリンパ浮腫外来はありますがすぐには受診できません。数ヶ月後に受診する頃にはリンパ浮腫が悪化していることも多いそうです。
そのため、毎日のちょっとした体調チェックがとても大切です。
たとえば、
• 昨日と比べて腕の張り具合は?
• 朝と夜で腕の感覚に違いは?
• 肩の動きが悪くないか?
• 今日はなんとなく気分が落ち込んでいないか? 精神的なストレスも影響します。
など、忙しい日々の中でも、1日1回、自分のご機嫌を聞いてあげる習慣をつけましょう。
自分の一番の理解者は自分です。
調子が悪い日も、そのまま受け止めて無理しないように。
「いつもと違う?」そんな変化に気づけるように身体のセンサーを磨いていきましょう。
いつもの習慣を見直してみる
たとえば、お風呂上がり。
すぐに家事をしようと動いたり、座ってお風呂上がりの一杯、を習慣にしていませんか?
5分で良いので、大の字になってリラックスすると、リンパの流れが落ち着く、整うそうですよ。
私もさっそく取り入れてみましたが、確かに足のむくみが引きやすくなった感じがします。
ついでに、ストレッチをしたり保湿ケアを行うことで体の伸びが悪いところや重く感じるところ、ささいな変化に気づくことも。
運動も少しずつでいいので続けてください。使いすぎても良くないのですが、動かさないのもだめだそうです。甘やかさない、という言い方をされていました。
一日の中で5分でいいので、自分の身体に意識を向ける時間に使ってみましょう。
術後のケアも「自分のペース」で
手術したあとの傷を見るのが怖い…そんな気持ちがあっても大丈夫です。
無理をせず、少しずつ、自分の体に触れてみましょう。
1週間後に、「ちょっと良くなったかも?」と感じる。
そんな小さな変化が、セルフケアを続けるモチベーションになります。
頼れる場所を見つけておこう
「リンパ浮腫にはなっていないけど相談していいのかな?」
そんな時は、リンパ浮腫ケアをしている専門のセラピストに気軽に相談してみてください。
いざという時のために、頼れる場所を知っておくのはとても大事です。
リンパ浮腫外来に通っている方へ
病院でスリーブ(圧迫着)を購入するだけで、ケアについてはあまり教えてもらえない…
そんなギャップを感じている方もいるかもしれません。
次の診察までに、
• 日々の体の変化をメモしておく
• 「このケアでいいのかな?」と質問を用意しておく
など、診察を上手に活用しましょう。
若い世代の皆さんへ
若い世代は、学業・仕事・育児など、どうしても自分の体のことが後回しになりがちです。
セルフケアをずっと続けるのは大変。
でも、自分の身体とは一生の付き合い。
年齢を重ねると、今できることが難しくなることもあるから…タイミングを逃さないでほしい。
「忙しいから後でいいや」と思わず、
「今できることをする」ことが、未来の自分を大切にすることにつながります。
最後に
気圧や気温が下がる日、生理前など
体が重たく感じたり、むくみやすかったりしませんか?
そんな時は、「今日はそういう日」と受け止めて、無理せず自分をいたわってくださいね。
いつもの5%しかパワーがないときは、その5%なりの自分でやっていけばよいのです。
また明日は違う自分に出会いましょう。
リンパ浮腫だけではなく、術後のケアについて気になることがあれば、ぜひお気軽にご相談ください!