抗がん剤治療中の脱毛を予防できる?!
今回は、抗がん剤治療中の脱毛予防に有効な「頭部冷却装置」についてご紹介します。
頭部冷却装置とは?
抗がん剤治療の副作用として最も多く見られるのが脱毛です。脱毛は、抗がん剤治療を行う場合は避けられないものですが、頭部冷却装置により、頭皮を冷却することで血管を収縮させ、抗がん剤が毛根に到達するのを抑制することにより、脱毛のリスクを軽減することができます。
頭皮冷却装置<セルガード>|薄毛改善・発毛専門のリーブ21【公式】 (reve21.co.jp)
Paxman Scalp Cooling システム PSCS | センチュリーメディカル株式会社|CMI
使用方法と効果
頭部冷却装置は、抗がん剤の投与前から使用し、投与中および投与後も一定時間継続して冷却します。冷却によって頭皮が冷たく感じますが、多くの方が慣れていく過程で不快感が和らぐようです。
効果は個人差がありますが、多くの方が明らかな脱毛予防効果を実感されています。完全に脱毛を防ぐことは難しいですが、髪の毛の量を保つことができるため、治療中も精神的な負担を軽減することができます。一般的に抗がん剤治療が終わった後、髪がある程度生えそろうには数か月かかりますが、使用した方がその期間が短くて済むようです。
費用について
残念ながら、現時点では頭部冷却装置の使用に対して健康保険が適用されていません。そのため、費用は自己負担となり、病院によって異なります。多くの病院では個別の冷却用キャップ(帽子)に10万円弱、装置1回の使用で1~2万円程度の価格を設定しています。抗がん剤の投与回数は、治療の内容により4~10数回と幅があるため、トータルの費用も10数万円から30数万円と、治療の回数により異なります。
まとめ
抗がん剤治療中の脱毛は、多くの患者さんにとって大きなストレスとなります。しかし、頭部冷却装置を使用することで、髪の毛をある程度保ちながら治療を続けることが可能です。
一方で、患者さんにとっては費用の負担が大きいこと、病院にとっては人手や場所が取られるうえ、装置の装着に関わる医療スタッフの習熟が必要であること、などがハードルとなり、日本ではあまり普及していません。
私も以前勤務していた病院で、看護師の協力を得てこの装置を使用し、効果を実感しました。
患者さんにとっては、脱毛を予防できる効果はもちろんですが、脱毛という外見の変化に対して選択肢がうまれ、自己決定権を持つことで、治療中もセルフケアに前向きに取り組んでいただけます。医療スタッフも、患者さんの希望のために一緒に試行錯誤して向き合うなかで、心理的にサポートできた面は大きかったように思います。
乳がんの治療には、脱毛以外にも様々なことが起こりえますが、これを支援するケアも充実しています。メリット・デメリットを正しく知り、患者さんが納得して選択できるよう、このようなサポーティブケアへのアクセスが容易になることを願います。