乳がん検診で要精密検査となったら③マンモグラフィーの「石灰化」
乳がん検診のマンモグラフィで「石灰化」と指摘されることがあります。
「石灰化」は、多くの場合良性の変化です。乳がんに関連する石灰化は、形状や分布に特徴があるため、専門の医師の判断が必要です。
石灰化とは?
石灰化とは、カルシウムの塊が雪の結晶のように沈着して白く写る現象を指します。
マンモグラフィでは、石灰化は1mm以下の小さな白い点として映ります。
石灰化自体は症状を引き起こすことは少なく、多くの場合、定期検診で偶然発見されます。石灰化は、良性であれば体に害はなく、触れても感じることはできません。問題となるのは、石灰化の原因が何であるかです。多くの石灰化は良性ですが、一部は乳がんに関連している場合があります。
石灰化が乳がんになるの?という質問をよく頂きます。石灰化自体が乳がんになるのではなく、石灰化で見つかる乳がんがあるため注意が必要である、と考えてください。
乳がんに関連する石灰化の特徴
乳がんに関連する石灰化は、乳がん細胞からの分泌物がたまったり、がん細胞が死んだ後に見られる変化です。形状や分布に特徴があり、以下の特徴がある場合、乳がんの可能性が考えられます。
・形が不揃いなもの
・狭い範囲に集まっている、乳管の流れに沿って並んでいる
・線のような形や枝分かれした形の石灰化
・石灰化と共に他の所見(腫瘤やFADなど)が見られる
非浸潤がんと石灰化
乳がんのうち、非浸潤がんとは、がん細胞が乳管内に留まり、周囲の組織に拡がっていない(浸潤していない)状態のがんを指します。
非浸潤がんは、マンモグラフィで石灰化として発見されることが多く、治療により完治する可能性が非常に高い乳がんとされています。すぐに命に関わらないゆっくりと進行するものが多く、過剰な検査や治療が問題となっています。
良性の石灰化の特徴
良性の石灰化には以下のような特徴があります:
・比較的大きめ、均一な大きさ、数が少ない
・たくさんあるが、両方の乳房・全体にある、パラパラと散らばっている
原因として、以下のようなものがあります:
・血管や皮膚の石灰化:乳腺とは無関係なところにできます。
・線維腺腫、乳腺症、乳管拡張症など良性の乳腺疾患、妊娠・授乳や加齢、女性ホルモンの影響による変化。炎症や乳腺の細胞が分泌した分泌液などが原因となります。
・乳房温存手術や豊胸手術後に生じる石灰化。
乳腺症と石灰化
乳腺症は、女性ホルモンのバランスの変化により、乳腺組織が変化し、しこりや痛みを伴う良性の疾患です。検診で発見される乳腺症の石灰化は、大きさが不均一であったり、小さな石灰化が集まって見られることも多く、がんとの区別が難しいことがあります。
石灰化が見つかったときに必要な追加検査
マンモグラフィ検査で石灰化が見つかった場合、これらの形状や分布パターンに基づいて良性か悪性かを評価します。前回のマンモグラフィがあれば比較します。前回より増えている場合は、より悪性を考えます。
追加の検査として、まず超音波検査を行います。石灰化のある部位に超音波検査で異常がみられた場合は、超音波検査を利用した生検(組織の一部を採取して詳しく調べる検査)が行われることがあります。
超音波検査で異常がなければ、経過観察の方針となることがありますが、石灰化のパターンから乳がんを疑う場合、MRI検査を追加したり、マンモグラフィを活用した生検が行われます。当院では、地域の専門施設と連携してMRIやマンモグラフィガイド下の生検を行います。
まとめ 石灰化が見つかったらどうする?
石灰化で見つかる乳がんのほとんどは初期の乳がんであり、適切な治療により治すことができます。一方で、最初のうちは良性の石灰化と見分けがつきにくく、診断がつかないこともあります。医師の指示に従って適切な検査や経過観察を行うことが重要です。
しかし、石灰化の多くは良性ですので、マンモグラフィで石灰化を指摘されても、過度に心配しないようにしましょう。授乳後や、年齢を重ねると石灰化が出てくることもあるので、定期的にマンモグラフィを受け、変化はないか確認しましょう。