AIと医療|人間には、味がある
先日、子供と将来の仕事について話をしていました。
「大きくなったら、何の仕事をしようかな」
私は何気なく、
「今はAIもあるし、ロボットもあるからね。これからは、今ある仕事もずいぶん変わるかもしれないね」
と話しました。
すると子供が、こんなことを言いました。
「AIもいいけど、人間には味がある。完璧じゃないからいいんだよ。 」
「僕は、大きくなったらドラえもんを作りたい」
実は、私も子供もドラえもんが大好きです。
最近、『映画ドラえもん のび太と空のユートピア』を見たそうなので、その影響もあったのかもしれません。
医師はいらなくなる?
AIの進歩を見ていると、これからAIの画像診断の精度がさらに高くなれば、乳腺の画像を私より正確に読めるようになるかもしれない。
膨大な論文やガイドライン、患者さんの検査結果、遺伝情報などを瞬時に整理して、その人にとって適切な治療を提案できるようになるかもしれない。
手術だって、ロボットの方が人間の手よりも細かく、正確に動けるようになるかもしれません。
そう考えると、では、医師の仕事は必要なくなるのだろうか?と、少し不安になったことがあります。
医師になって長い時間をかけて身につけてきた知識や技術が、AIやロボットの方が優れている時代が来る。
AIに仕事を奪われる...医師にとっても、決して他人事ではありません。
「人間には味がある」
小学生のわが子が言ったこの言葉が、なぜか心に残りました。
乳腺外科には、
「しこりがある気がする」
「検診で再検査になってしまった」
「乳がんだったらどうしよう」
そんな不安を抱えて来られる方がたくさんいらっしゃいます。
画像を正確に読んで、
「悪性の可能性は低いです」
とAIが答えられるようになったとしても、
患者さんが本当に知りたいことは、それだけではないかもしれません。
「私は大丈夫でしょうか」
「この先、どうしたらいいですか」
「家族にはどう話したらいいでしょう」
「仕事は続けられますか」
「手術を受けるのが怖いです」
そこには、医学的な正解だけでは答えられないことがあります。
もちろん、医学的な正確さはとても大切です。
私は乳腺専門医として、できるだけ正確に診断し、エビデンスに基づいた治療を提案したいと思っています。
AIがそこを助けてくれるのであれば、活用したい。むしろ、使わない理由はありません。
AIが画像を読んでくれるなら、その力を借りる。
膨大な医学情報を整理してくれるなら、その力を借りる。
ロボットがより安全で正確な手術をしてくれるなら、その技術を使う。
そうして医療がより安全で、より正確になっていくことは、患者さんにとって素晴らしいことです。
その一方で、
「この患者さんは、今どんな気持ちなのだろう」
「この説明をどう伝えたら、この人は少し安心できるだろう」
「医学的にはこちらが正解だけれど、この方が大切にしていることは何だろう」
と考えること。
それは、また別の仕事なのだと思います。
伝えること
検査を受ける方にとって、結果を聞くまでの時間は、決して短いものではありません。
結果が出るまで不安だったり、
何度もインターネットで検索してしまったり、
悪いことばかり考えてしまったり。
だからこそ私は、検査結果そのものだけではなく、
その方が何を心配しているのかを知りたいと思っています。
同じ検査結果でも、患者さんによって受け止め方は違います。
同じ病気でも、生活も、家族も、仕事も、価値観も違います。
医療の「正解」を提示するだけではなく、
その人にとってのより良い選択を一緒に考える。
それも医師の大切な仕事なのではないかと思います。
未来の医師は、今とは違う仕事をしているのかも
もしかしたら将来、AIが私より画像を正確に読んでいるかもしれません。
私より多くの医学論文を知っているかもしれません。
私より適切な治療法を提案できるかもしれません。
ロボットが私より正確に手術をする日も来るかもしれません。
そうなったら、医師は 自分の知識や技術を提供する仕事 ではなくなって、
AIやロボットを使いこなしながら、患者さんの話を聞き、一緒に考え、迷ったときにそばにいて、その人に合った医療を選ぶ。
そんな仕事に変わっていくのかもしれません。
AIにできることはAIに。
ロボットにできることはロボットに。
そして、人間にしかできないことは人間がする。
そんな医療になればいいと思います。
「ドラえもんを作りたい」
わが子はいつも、
「大きくなったらドラえもんを作りたい」
と言っています
ドラえもんは、何でもできる完璧なロボットではありません。
ひみつ道具をうまく出せなくて失敗するし、昼寝ばかりしているのび太君を怒るし、ネズミを怖がる。
どら焼きを勝手に食べたのび太君と喧嘩もする。
でも、のび太のことを心配して、困ったときにはそばにいる。
だから、私たちはドラえもんが好きなのかもしれません。
未来のAIやロボットも、ただ「完璧な機械」になるのではなく、
人間のそばにいて、人間を助けて、時には一緒に悩んでくれるような存在になったら素敵だなと思います。
そして私自身も、AIがどれだけ進歩しても、
「この先生に診てもらってよかった」
「ここに来てよかった」
「また診てもらいたい」
と思っていただける医師でありたいと思います。
わが子が言った、
「完璧じゃないからいいんだよ。人間には味がある」
という言葉。
小学生の何気ない一言でしたが、
AIの時代に医師として何を大切にしていけばいいのかを、少し教えてもらったような気がしています。
未来がどうなるのかは、私にも分かりません。
でも、ドラえもんを作りたいというわが子の夢を聞いて、
人間とAIとロボットが、それぞれの得意なことを持ち寄って、一緒に誰かを幸せにする。
そんな未来なら、楽しみだなと思っています。
夏休みが終わって、子どもたちも少しずつ日常へ。
皆さんの夏休みはどうでしたか?
ご来院の際には、ぜひ夏休みの様子をお聞かせください。
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