乳がんの検診でMRI検査は必要?
乳がんの早期発見には、定期的な検診がとても大切です。
そこでよくいただく質問が、
「MRI検査も受けた方がいいのでしょうか?」
というもの。
結論から言うと――
すべての人に必要な検査ではありませんが、一部の方にとってはメリットがあります。
そして最近では、身体への負担がほとんどない「MRI乳がん検診(ドゥイブスサーチ)」という新しい検査方法も登場し、注目を集めています。
今回は、乳がん検診におけるMRIの役割と、最新のMRI検査「ドゥイブス法」についてご紹介します。
乳房MRIってどんな検査?
乳房MRIは、磁場と電波を使って乳腺を詳しく調べる検査です。
造影剤を注射して、乳房専用の装置で撮影します。
造影剤により、乳房の中の状態がより詳しく分かります。病変がある場合に、造影剤の染まり方で良悪性の判断を行うことが出来ます。
- X線を使わないため、被ばくの心配はありません。特に特殊な遺伝性乳がんの中には、X線被爆によりがんが発生するリスクのある方もいるため、MRIが選択されます。
- 乳腺の密度が高い方(高濃度乳腺)にも向いており、小さな病変を高い感度で検出できるのが特徴です。
【注目】MRI乳がん検診(ドゥイブスサーチ)とは?
従来のMRI検査は造影剤の注射が必要でしたが、
ドゥイブスサーチ(DWIBS:拡散強調画像)では、造影剤を使わずに乳がん検査が可能で、検査時間も短時間です。
MRI検査に適したタイミングは?
生理前は乳腺が張り、水分が多くなることで、がんの検出力が下がることがあります。
そのため、MRI検査は以下の期間での受診をおすすめしています。
- 生理の3〜21日目の間
特に 生理開始から5〜14日目 が最適です。 - 次の生理の直前でも検査は可能ですが、検出能を高く保つためには上記期間内が望ましいです。
- 閉経後の方は、いつでも受診できます。
授乳中・妊娠中のMRI検査について
● 授乳中
授乳中は乳腺が発達し、血流が豊富になっており、がんの発見効率が落ちる可能性があります。
造影剤の使用後はしばらく授乳が出来ません。
● 妊娠中
妊娠中のMRI検査は、医師の診察と判断が必要です。
閉所恐怖症の方でも受けられる?
「狭いところが苦手」という方もいます。MRIはトンネルの中に入るような感じになるため、圧迫感を感じる方もいます。不安が強い場合は、事前に安定剤などでリラックスして受ける方法もあります。
MRI検査の注意点と制限事項
MRIという機械の性質上、注意点があります。
- 心臓ペースメーカーが入っている方は、機種によってMRI使用が制限される場合があります
(※MRI対応型であれば可能な場合あり) - 古いタイプの脳動脈瘤クリップをお持ちの方も注意が必要です
- 大きなタトゥーがある場合、皮膚がやけどする恐れがあるため、病院で判断が分かれることがあります
- MRIは撮影中に大きな音がしますので、不快に感じる場合もあります
- うつ伏せの姿勢で検査を行います。造影剤を使用した検査では30分以上かかりますので、体勢が取れない場合は検査が難しくなります。
MRIが有効とされるケース
MRI検査(従来型・ドゥイブス法を含む)は、以下のようなケースで特に有効です。
- 遺伝的リスクが高い方
BRCA1/2変異などがある方や家族歴のある方 - 乳がんの既往がある方
再発や反対側の乳房のチェックとして - 他の検査で判断が難しい場合
マンモグラフィや超音波で異常がはっきりしないとき
よく使われる検査との違いをまとめました
検査法 | 使用する技術 | 得意なこと | 苦手なこと/注意点 |
---|---|---|---|
マンモグラフィ | X線 | 微細な石灰化の検出 | 高濃度乳腺では病変が見えにくい |
超音波(エコー) | 音波 | 若い女性にも有効 | 検査者の技術による差が出やすい |
MRI | 磁場±造影剤 | 高濃度乳腺でも検出力が高い | 偽陽性が多く、費用も高額 |
一般的な検診には必要?
一般的な乳がん検診では、マンモグラフィや超音波検査が基本です。
MRIは必ずしも全員に必要なものではありません。
理由としては:
- 偽陽性(がんではないものを疑う)で不安や追加検査が生じる可能性
- 費用や検査時間の負担
- 精密検査が必要になる場合がある
- 造影剤を使用する場合、まれにアレルギーや腎障害のリスクがある
などがあります。
しかし、ドゥイブスサーチのような身体への負担が少ない検査が今後さらに普及すれば、
将来的にはより幅広い層への適応も期待されます。
「自分はMRIを受けた方がいいの?」と思ったら
もし不安や疑問があれば、ぜひ一度当院へご相談ください。
乳腺の状態、年齢、家族歴などを総合的に判断し、あなたにとって最適な検査方法をご提案いたします。
「念のため」ではなく、必要なタイミングで、必要な検査を受けましょう。
これが、心にも身体にも優しい乳がん検診の考え方です。
まとめ
✅ MRI検査は感度が高く、特定の方にはとても有効
✅ 「ドゥイブスサーチ(無痛MRI乳がん検診)」では造影剤不要、痛み・負担が少ない
✅ 一般検診にはマンモグラフィ・超音波が基本
✅ 気になる方は、乳腺専門医に相談を
ご相談はお気軽にどうぞ
当院では、乳がん検診に関するご相談が可能です。
ドゥイブスサーチ(無痛MRI乳がん検診)後の精密検査に対応しています。
精密検査のためにMRI検査を行う時は、近隣の病院と連携していますのでご安心ください。
乳腺専門医が、あなたの身体やライフスタイルに合った検査をご案内いたします。
どうぞお気軽にご相談ください。