乳がんの地域連携①がん診療連携病院との連携
医療の地域連携とがん診療連携拠点病院
「地域連携」という言葉を知っていますか?これは、患者さんを中心に地域の医療機関が互いに情報交換を行い、より良い医療と安全を提供する仕組みです。
がん医療で、この「地域連携」の中心となるのが、がん診療連携拠点病院です。特に、我が国に多いがん(肺がん、胃がん、肝がん、大腸がん、乳がん)の診療については、どこに住んでいても質の高いがん医療が受けられるよう、全国に指定要件を充足したがん診療連携拠点病院が指定されています。がんの地域連携では、地域のかかりつけ医(連携医)とがん診療連携拠点病院が協力して患者さんの健康をサポートしていきます。
当院も、兵庫県・大阪府のがん診療連携拠点病院と連携して乳がんの診療を行っています。
乳がんの地域連携
乳がんの地域連携では、当院のような地域の乳腺外科クリニックと、がん診療連携拠点病院が役割分担しながら、協力して情報交換を行い、患者さんの視点に立ち、安心で質の高い医療を提供することを目指します。
乳がん患者さんの増加により、治療を行っている病院の乳腺外科の外来はパンク状態で、長い待ち時間が発生しています。私自身、勤務医をしていた時は、症状があってもなかなか予約が取れない、不安をゆっくり相談できないといった声を聴きました。 乳腺外科クリニックが、乳がん検診や乳腺の一般的な検査・治療を行い、病院は病院でしかできない治療や検査に注力することでお互いに役割を分担します。患者さんも二人の主治医が存在することで、安心して治療に臨むことが期待できます。
例えば、当院では、乳がんの検診、診断を行います。検査の結果、もし乳がんの診断となった場合は、専門的な治療をがん診療連携拠点病院で受けて頂きます。手術・抗がん剤・放射線治療などの初期治療が終わり、安定した状態になれば、術後の内服や経過観察を拠点病院と協力して当院で行っています。
乳腺外科クリニックの役割
乳がんの治療や経過観察は5年から10年に及ぶことが多く、治療はより複雑になり、選択肢の幅が広がっています。一方で、乳がんに罹患する方の年齢は幅広く、置かれている状況も一人一人違います。その方のライフステージに寄り添った、長期的で細やかなケアが求められます。
乳がんの治療が一旦終了して「卒業」となった場合も、反対側の乳がんの発症を経験したり、数年〜十数年と長い年月を経てから転移再発をきたすことがあります。このような乳がんの再発の不安を抱えている方は多くいらっしゃいます。
乳がんの治療はずいぶん進歩しましたが、術後のリンパ浮腫、痛みやしびれなどの後遺症により生活上の支障がある方もいらっしゃいます。
当院は乳がん診療に精通したクリニックとして、地域で暮らす女性の健康を見守っています。もし、乳がんと診断された時も、診断から治療方針の決定、治療を受ける中でも、その方らしく人生を過ごしていただけるように、と願っています。治療の副作用や病気の不安が少しでも和らぐように、一緒に悩んだり、喜んだりする人生のパートナーになれれば幸いです。