サプリメントとの上手な付き合い方
今日は、患者さんからよく質問される「サプリメントとの付き合い方」についてお話ししたいと思います。サプリメントは、栄養不足を補い、健康をサポートするための便利な手段ですが、適切に使用しないと健康リスクを伴うこともあります。
1. サプリメントの役割と限界
サプリメントは、食事から十分な栄養素を摂取できない場合に補助的に使用されます。特にビタミンDやカルシウム、オメガ-3脂肪酸など、特定の栄養素は多くの人が不足しがちです。これらの不足を補うことで、骨の健康を維持し、免疫機能をサポートする効果が期待されます (BMJ) 。
しかし、サプリメントはあくまで「補助的なもの」であり、バランスの取れた食事を代替するものではありません。過剰摂取や不適切な使用は、逆に健康に害を及ぼす可能性があります。例えば、脂溶性ビタミン(A、D、E、K)を摂取しすぎると、体内に蓄積されて毒性を引き起こすことがあります 。
2. 乳がん患者とサプリメント
乳がん患者やリスクが高い人々にとって、特定のサプリメントは重要な役割を果たすことがありますが、医師の指導のもとで使用することが大切です。
ビタミンD: ビタミンDは骨の健康に不可欠であり、乳がんの治療により骨粗鬆症のある方へ、処方薬として投与することがあります。担当の医師に確認しましょう。
抗酸化サプリメント: ビタミンCやEなどの抗酸化サプリメントは、がんのリスクを低減する可能性がある一方で、過剰摂取は逆にがんの進行を促進するリスクも報告されています。特に薬物治療中の患者さんは、薬剤との相互作用の可能性がありますので、医師と相談してください 。
3. サプリメントの選び方と注意点
信頼性のあるブランドを選ぶ: サプリメントは、品質や有効性に差があるため、信頼性のあるブランドを選ぶことが重要です。第三者機関の認証を受けている製品は、一定の品質基準を満たしている可能性が高いです 。
成分表示を確認する: 購入前に成分表示を確認し、含まれている栄養素の種類と量を把握しましょう。特に、アレルギーを引き起こす可能性のある成分や、薬との相互作用がある成分には注意が必要です 。
医師と相談する: 特に既往症がある場合や薬を服用している場合は、サプリメントを始める前に必ず医師と相談しましょう。医師は、患者さんの健康状態や治療内容に基づいて、適切なサプリメントとその使用量をアドバイスしてくれます 。
4. 番外編
プロテインシェイク:大豆を主成分とするプロテインシェイクには、イソフラボンという植物性エストロゲンが含まれています。イソフラボンは女性ホルモンの一種であるエストロゲン様の作用を持つため、乳房の張りや痛みなどの症状を引き起こす可能性があります。男性の方で、摂取しすぎのために胸が張って当院へ来院した方もいました。
プエラリア・ミリフィカ:プエラリア・ミリフィカは、タイやミャンマーを原産とするマメ科の植物で、特に女性の健康や美容をサポートする成分として注目されています。バストアップ効果があるとして美容サプリメントやクリームに使用されています。プエラリア・ミリフィカには、大豆に含まれているイソフラボン類より約1000~10,000倍強いエストロゲン活性を持ち合わせていると言われています。エストロゲン様の作用が乳腺を刺激し、バストのボリュームアップを促進するとされています。
しかし、プエラリア・ミリフィカによる危害情報が、全国の消費生活センターなどに寄せられています。プエラリア・ミリフィカを含む製品は、成分量が不安定で多大な危害を引き起こす可能性があり、日本医師会も注意喚起しています。本当に必要かどうか十分に検討し、慎重に判断してください。
「プエラリア・ミリフィカ」を含む健康食品の使用にご注意を! (med.or.jp)
エクオール:
エクオールは、大豆イソフラボンの一種であるダイゼインが体内の腸内細菌によって代謝されて生成される成分です。エクオールは、女性ホルモンであるエストロゲン様の作用を発揮するため、女性ホルモンバランスのサポートに役立つとされています。
エクオールは、ホットフラッシュ、骨粗しょう症の予防、肌の健康維持などに寄与するとされています。しかし、すべての人がエクオールを生成できるわけではなく、日本人女性の約50%程度がエクオールを体内で作ることができるとされています。そのため、エクオールを直接摂取できるサプリメントが注目されています。 特に関節の痛みに関して良い効果がみられる患者さんもいらっしゃるため、最近は整形外科の先生もエクオールの摂取をお勧めすることがあるようです。
私自身は、更年期症状の軽減のほか、ホルモン受容体陽性の乳がん患者さんの内分泌療法中の副作用緩和にもお勧めしています。もちろん、違う考えの先生もいらっしゃると思いますので、主治医の先生とよくご相談してください。
エクオールは処方薬ではないため、ご自身でご購入いただくことになります。多くの会社からエクオールは販売されていますが、大塚製薬のエクエル®(女性のための基礎サプリメント:大塚製薬のエクエル )は、安全性や効果について研究結果が多く報告されており、当院でも取り扱っています。
4. まとめ
サプリメントは、健康を維持し、特定の栄養素不足を補うための有効な手段ですが、適切な使用が求められます。「天然」であることが必ずしも「安全」を意味しているわけではありません。
また、病気の予防や治療に有効であるという報告はそれほど多くなく、がんを予防することが証明された栄養補助食品はありません。
乳がんなど病気で治療中の方は、医師と相談しながら使用することが重要です。まずは、日々の食事を基本に、必要に応じてサプリメントを賢く活用していきましょう。
これからも皆さんの健康をサポートするための情報を提供していきます。受診の際は何でも質問してくださいね。
参考文献
- Mayo Clinic – Dietary supplements: Do they help or hurt?
- National Institutes of Health – Dietary Supplements
- 厚生労働省eJIM | サプリメントおよびハーブ[相補(補完)・代替療法との向き合い方 – 一般] (ncgg.go.jp)
- 厚生労働省eJIM | インフォグラフィックでわかる統合医療 (ncgg.go.jp)