乳房温存と全摘、どちらを選ぶ?
乳がんと診断されたとき、多くの方が悩むのが「乳房温存術(部分切除)」と「乳房全摘術(乳房をすべて取り除く手術)」のどちらを選ぶべきか、という問題です。どちらにもメリット・デメリットがあり、ご自身のがんのタイプや価値観に合った選択が大切です。
乳房温存術とは?
乳房の一部を切除し、可能な限り乳房の形を残す手術です。手術後は通常、放射線治療を併用することで、乳房の中のがんの再発を防ぎます。
✅ メリット
- 乳房の形がある程度残るため、見た目の変化が少ない
- 手術範囲が小さく、回復が比較的早い
- 📝入院日数が短く、日帰りの手術を行っている病院も。
❌ デメリット
- 放射線治療が必要になる
- がんの範囲によっては適応できない場合がある
- 乳房内にがんが再発する可能性がゼロではない
乳房全摘術とは?
乳頭乳輪や皮膚の一部を含めて、乳房をすべて切除する手術です。
再建手術を行えば、乳房の形を取り戻すことも可能です。
✅ メリット
- 乳房内での再発リスクがほぼなくなる(ゼロではありません)
- 放射線治療が不要な場合がある
❌ デメリット
- 乳房を失うことによる精神的・心理的負担
- 手術範囲が広いため、術後ドレーンという管を数日体内においておきます。
- 再建を希望する場合、追加の手術が必要
皮下乳腺全摘術とは?
皮下乳腺全摘術(乳房皮下全摘術)は、乳腺をすべて取り除きつつ、乳頭・乳輪や皮膚の一部を温存する手術です。全摘術の一種ですが、乳房の外観をできるだけ維持できるため、再建を希望する方に適した方法の一つです。
✅ メリット
- 乳頭・乳輪や皮膚を残すこともできて、自然な乳房の形を保ちやすい
- 乳房再建を組み合わせることで、より自然な仕上がりになる
- 乳房内再発のリスクを減らせる
❌ デメリット
- 乳頭・乳輪を温存する場合、乳管内にがんが残る可能性があり、適応が限られる
- 乳房のサイズによっては、再建を前提とした手術方法になる
どちらを選ぶべき?
「乳房温存術と全摘、どちらが生存率が高いのか?」という疑問を持つ方も多いですが、早期乳がんの場合、温存+放射線治療と全摘では生存率に大きな差はないとされています。
では、選択のポイントは何でしょうか?
1. がんの広がり
- がんが広範囲に広がっている場合、温存が難しいことがあります。
- 乳房内に複数のがんがある場合は、全摘が適応されることが多いです。
2. 放射線治療の可否
- 乳房温存術では放射線治療がほぼ必須です。
- 全摘術の方は、リンパ節転移が多い、腫瘍が大きい場合などは放射線治療が必要なこともあります。
- 過去に放射線治療を受けた方は放射線が受けられないため、全摘が選ばれることがあります。
- 時間の制約
- 放射線治療は毎日外来通院が必要です。
- 通常5~6週間、一般的に月~金曜日に行われ、治療にかかる時間は15~30分程度です。放射線を照射する時間そのものは短いので、外来で治療後に仕事に行くという方もいます。病院から離れていて通院が難しい場合は、医師と相談してみましょう。
- 費用
- 放射線治療の費用負担は治療期間や回数によって違ってきます。
- 目安として、乳がん手術後の25回〜30回の放射線治療で、費用は150,000〜300,000円程といわれています。高額療養費制度が利用できますから、実際にかかる費用はこれよりも少なくなります。
3. 精神的な負担
- 「乳房を残したい」という思いがある方には、温存が向いているかもしれません。しかし、病変が広い場合には、無理に温存手術を行うと、かえって乳房の変形が強くなってしまいます。全摘+再建手術の選択肢について考えてみましょう。
- 「再発リスクをできるだけ減らしたい」「放射線治療を受けたくない」と考える方は、全摘を選択することもあります。皮下脂肪が少なく乳房の小さい方では、フラットなシルエットでもあまり違和感を感じない方もいます。
4. 乳房再建を希望するか
- 全摘後に乳房再建をすれば、乳房のふくらみを取り戻すことができます。
- 再建には自家組織(自分の体の一部)やシリコンインプラントを使用する方法があります。複数回の手術が必要になる場合があります。
- 乳頭や乳輪も手術で作ったり、タトゥーや人工物(シリコンで作られたもの)で代用することが出来ます。
最終的に自分が納得していることが大切
「どちらの手術が正解」というものはありません。がんの状態や個人の価値観によって、最適な選択肢は異なります。治療を決める際は、主治医と十分に相談し、納得のいく選択をすることが大切です。
どんな選択をしても、あなたの命を守るための大切な一歩です。ご自身にとって最善の選択ができるよう、担当医と話し合いながら決めていきましょう。
手術方法について相談したい、という方は、ぜひご相談にお越しくださいね。
午後の診療は比較的すいていますので、お勧めです。