災害時に備える — 乳がんのホルモン療法中の方へ

この度の鳥取・島根地震により被害を受けられた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
突然の地震で、不安な時間を過ごされていることと思います。
皆さまのご安全と、少しでも早く心穏やかな日常が戻りますようお祈りしております。
どうか無理をなさらず、安全第一でお過ごしください。
東日本大震災(2011年)や 能登半島地震(2024年)、阪神・淡路大震災(1995年)、熊本地震(2016年)など、過去に日本で起きた大きな地震では「慢性疾患の薬を切らしてしまう」「避難時に薬をなくす」「流通が滞って薬が届かない」といった問題が繰り返されました。
特に避難・交通遮断の影響で、薬にアクセスできない期間が7日以上に及んだ例や、全国的な供給調整が必要になった事例が報告されています。
ホルモン療法を続けている患者さんには、事前に備えておくことをおすすめします。
内服薬の予備を用意しておくことが大切
- ホルモン療法:タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬(アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン)など連日服用が必要です。
- 災害時は病院や薬局が被災し、処方や受け取りができない期間が発生します。過去の大震災では避難で薬を紛失するケースや処方情報を持たずに避難するケースが多く見られました。
- 2~3週間分の余裕(医師・薬局と相談の上で)」を持つことが理想的ではないでしょうか。各医療機関・薬局の対応は異なりますので、事前にかかりつけ医と話し合っておくのも良いでしょう(※保険的条件にも留意)。
過去の地震で問題になった例
- 薬の紛失・持ち出し忘れ:避難時に手荷物に入れていないために薬を失った人が多かった。お薬手帳や処方箋のコピーが無いと再処方が難しい場面があった。
- 医療・流通の寸断による供給不足:2011年の大震災では一部薬の供給に全国的な影響が出て、代替品や供給調整が行われた。大規模災害では薬の物流が一時的に混乱し、通常入手できる薬が届きにくくなることがある。
- 避難所での薬管理の困難:避難所では薬の保管や管理(誰がどの薬を飲むか等)が課題となったため、患者側で「いつ、どの薬を飲んでいるか」が即座に分かる準備が有効。
準備しておきたいこと
- 処方について相談する
- 次回受診時に「災害時に備えて予備をいただけますか?」と相談してみましょう。
- お薬手帳(または薬のリスト)を常に携帯
- 薬の正式名称、用量、内服方法、病院の連絡先(医師名・電話)を記載。スマホ写真も有効。避難の際はすぐ取り出せる場所に。
- 処方の写し(紙)を1部保管
- 万一本体を失ったときに再処方がスムーズになります。薬局の領収書や処方箋のコピーも有効。
- 携帯用のピルケース/透明な袋に入れる
- 薬とお薬手帳、緊急連絡先をまとめておく。避難時の紛失を減らす効果あり。
- 家族/同居者に服薬スケジュールを共有
- 避難時の確認が容易になります。
- 保管環境の確認
- 飲み薬の多くは室温保存で差し支えありませんが、直射日光や高温多湿は避けてください。被災時に湿度や温度が高くなる可能性があるため、乾燥剤などを入れておくと安心です。
- 避難時の行動フローを作る(例:持ち出しバッグに薬→お薬手帳→処方写し)
もし薬が切れてしまったら?
- まず病院に連絡してください。 被災状況に応じて電話やメールなどで指示を出します。病院が被災している場合でも、近隣の医療連携網・災害医療チーム(DMAT等)や薬局を通じて対応する手配を試みます。
- 避難所や臨時診療所にお薬手帳や処方の写しを提示してください。避難所に常駐する医師・薬剤師が応急対応するケースが多くあります。
- 近隣の薬局に事情を説明:薬局同士の連携で代替薬や応急処方が可能な場合があります(薬剤の種類による)。
「持ち出し用ミニカード」例(A6サイズに印刷してバッグへ)
氏名:________
生年月日:______
主治医:______(クリニック名・電話)
服用薬(例)
1)タモキシフェン 20mg ×1日1回 (朝)
※アレルギー:______
お薬手帳所在:______
かかりつけ薬局:______(電話)
特記事項:妊娠・授乳の可能性/抗凝固薬併用など
患者さんへのお願い
- 「災害時の予備」について一度相談してください。可能な範囲で対応します。
- お薬手帳・処方の写しは必ず更新し、避難袋(非常持ち出し袋)に入れておいてください。
- 周囲の家族にも飲んでいる薬のことを伝えておきましょう。避難時に代理で説明してもらえます。
最後に
災害はいつ起こるかわかりません。医療者はできる限りの支援を行いますが、皆さん一人一人の日ごろの準備が最も有効です。
ホルモン療法は毎日の継続が必要ですので、診察の際に遠慮なく、緊急時・災害用の備えについてご相談ください。
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