20代、30代の乳がんについて
AYA世代のがんについて知っていますか?
AYA世代とは、Adolescent&Young Adult(思春期・若年成人)のことをいい、がん医療において、15歳から39歳のがん患者さんのことをいいます。がんの罹患率,死亡率が最も低い世代ですが、がんはAYA世代の病死の原因の第一位です。年間約2万人のAYA世代の方が、新たにがんの診断を受けるとされています。
先日、国立がん研究センターがん対策情報センターが全国のがん患者を対象に実態調査を行いました。この中で、AYA世代のがん患者は、経済的、就労状況、医療者との関係の構築などにおいて不利な状況に置かれていることが分かりました。経済的な理由で治療を断念する方や、周りに迷惑をかけていると感じる方、心や身体のつらさを医療者に伝えられない方の割合が他の世代より多いそうです。
AYA世代の乳がんの特徴
乳がん患者さんでは約5%がAYA世代と言われています。 20代、30代は乳がん検診の対象年齢にはなっていないことが多く、患者さん自身がしこりや乳頭からの血性分泌物などに気づいてみつかっています。
AYA世代の乳がんの治療に関する基本的な考え方はほかの世代の患者さんと同じですが、AYA世代で乳がんと診断された患者さんは遺伝性乳がんの可能性を考慮する必要があります。また、AYA世代の乳がん患者さんは、結婚や出産、子育て、仕事など、さまざまなライフイベントを考える時期と治療が重なります。一人ひとりの患者さんの多様なニーズに応じた診療と長期的なサポートが求められます。
20代、30代の方の命を乳がんから守るために
当院には、20代・30代の比較的若い世代の方も多く来院されています。
自分でしこりに気づいて受診される方。ご自身で乳がん検診を希望されて受診される方。検診で精密検査となり受診される方。 受診してもいいのだろうか?と受診をためらっている方。検査を受けるのが恥ずかしいと感じられている方。もし乳がんだったら?と思って怖くて受診できない方。 …
初めての検査、不安だと思います。しかし、乳房にみられる変化は必ずしも乳がんとは限りません。特に、20代、30代では「線維腺腫」「のう胞」などの良性の変化がよく見られます。 安心のためにも、乳がんの早期発見のためにも、気軽に乳腺外科のクリニックを受診してください。
また、当院では、自分自身の乳房を気にかけ、何か変化があればすぐに乳腺外科を受診する、ということをいつもお伝えしています。 年齢に関わらず、この「ブレスト・アウェアネス*」の習慣を身につけておくことが将来に自分の命を守る行動につながるのでは、と思います。
*ブレスト・アウェアネス
自分の乳房の状態に日頃から関心をもち,乳房を意識して生活することを「ブレスト・アウェアネス」といい,これは乳がんの早期発見・診断・治療につながる,女性にとって非常に重要な生活習慣です。「ブレスト・アウェアネス」を身につけるために,以下の4つの項目を実践しましょう。
①自分の乳房の状態を知るために,日頃から自分の乳房を,見て,触って,感じる(乳房のセルフチェック)
②気をつけなければいけない乳房の変化を知る(しこりや血性の乳頭分泌など)
③乳房の変化を自覚したら,すぐに医療機関へ行く
④40歳になったら定期的に乳がん検診を受診する
入浴やシャワー,着替えのときなどに,気軽に自身の乳房の状態をセルフチェックしましょう。「ブレスト・アウェアネス」を心がけることで,自分の乳房に対する関心や意識が高まり,変化があった場合にはすぐに医療機関を受診するなどの適切な行動をとることが習慣付くようになります。また,乳房の変化を意識することで,乳がん検診を定期的に受ける動機付けになります。しかし,セルフチェックさえしていれば検診を受けなくてもよいというものではありません。日頃から自分の乳房に関心をもち,40歳以降では定期的な検診を受けることが重要です。特に,乳がん検診で精密検査の必要がないと判定された場合でも,しこりや血性の乳頭分泌などの自覚症状がある場合は,放置せずに速やかに医療機関を受診することが重要です。
乳がん患者さん全体を見ると、20代、30代の乳がん患者さんは少数派です。どのような支援を必要としているのか、当事者からの声が届きにくいときもあります。同じ世代の方が、AYA世代のがんのことを知れば、次の時代にフィットする支援が生まれることもあるのではと思います。20代、30代の方も、まずは知ることから始めてみませんか?
参考となるリンク
全国AYAがん支援チームネットワーク https://ayateam.jp/
研究班・患者関係者による提言書 https://www.ncc.go.jp/jp/cis/divisions/health_s/teigen.pdf