乳がんと診断された方へ②情報を得るには?
乳がんと診断された時、どうやって情報を集めたら良いのでしょうか?あらゆる可能性を知っておきたいという方、あえて情報は集めないという方もいるかもしれません。
令和元年度に内閣府が行ったがん対策に関する世論調査(https://survey.gov-online.go.jp/r01/r01-gantaisaku/2-1.html)によると、がんと診断されたら、がんの治療法や病院に関する情報について、どこから入手しようと思うか?という質問に対し、下記のような回答結果が得られました。
①病院・診療所の医師・看護師やがん相談支援センター以外の相談窓口 66.4%
②インターネット・ツイッターやフェイスブックなどのSNS(国立がん研究センターのウェブサイト「がん情報サービス」以外) 36.9%
③家族・友人・知人 33.8%
担当医や看護師などの医療チーム
「病院・診療所の医師・看護師やがん相談支援センター以外の相談窓口」と回答した方の割合が最も高くなっています。がんと診断された方にとって、いかに担当医をはじめとした医療従事者が重要な情報源であるか、ということが分かります。
乳がんの診断を受けたばかりのときは、驚きや不安でいっぱいかもしれません。まずは、主治医の先生や他のスタッフとゆっくり話をしてみてください。あなたの乳がんのことを一番よくわかっているのは、今の医療チームです。一人で悩まずに、自分が気になっていることをリストアップして、次の診察の時に、勇気を出して聞いてみてください。先生の話はメモを取ってよく聞いてください。
がん相談支援センター
がん相談支援センターは、全国の「がん診療連携拠点病院」や「小児がん拠点病院」「地域がん診療病院」に設置されている、がんに関するご相談の窓口です。どなたでも無料で利用できます。がんに関する治療や療養生活、地域の医療機関などについて、看護師やソーシャルワーカーが相談に乗ってくれます。
がん診療連携拠点病院などを探す (ganjoho.jp)
セカンドオピニオン
検査が進み、気持ちが少し落ち着いてきた時。ご自身でいろいろ勉強されて、乳がんの治療について少し分かってきた時。 次のような疑問を持つ方もいるかもしれません。
- 手術で乳房の全摘を勧められた、乳房再建はどうしたらいい?
- 術後抗がん剤を受けるように言われた。ほかに選択肢はないの?
多くの病院では、ガイドラインに則り科学的な根拠に基づいた治療が行われています。 様々な治療の選択肢があるなかで、情報を医療者と患者さんが共有して、共に治療を決めていきます。担当医から説明された診断や治療方針について、納得がいかなかったり、別の治療法はないのかな?と思う場合もあるかもしれません。 担当医から提示された治療方針についてほかの医師の意見を聞きたいときは、セカンドオピニオンという方法があります。セカンドオピニオンは、担当医を替えたり、転院したり、治療を受けたりすることではありません。まず、ほかの医師に意見を聞くことがセカンドオピニオンです。
セカンドオピニオンの受けるには、まず担当医にその旨を伝え、紹介状や検査結果を用意してもらいましょう。セカンドオピニオンをどこで受けるか迷う場合には、がん相談支援センターに問い合わせると良いかもしれません。
セカンドオピニオンの前には、自分の病状や、なぜその治療法を勧められているのか振り返っておきましょう。 もし同じ診断や治療方針が説明された場合でも、別の医師から話を聞くと、別の見方が出来て、理解が深まることもあります。また、別の治療法が提案された場合には選択の幅が広がることで、より納得して治療に臨むことができます。
インターネットの情報
調査では、「インターネット・ツイッターやフェイスブックなどのSNS(国立がん研究センターのウェブサイト「がん情報サービス」以外)」から情報を得ると答えた方が2番目に多くなっています。
実は、インターネットの検索結果に掲載されているがんの情報のうち、科学的な根拠に基づく情報は半分以下といった調査結果(https://www.jto.org/article/S1556-0864(15)32421-7/fulltext#cesec50)があります。「乳がん」「治る」と検索すれば、科学的な根拠のない、高額な自費診療を促すサイトの広告が表示されることもありますので、インターネット検索で正しいがんの情報にたどり着くことは、決して簡単ではありません。
乳がんの一般的な情報がわかるおすすめのサイトをあげておきます。
◇ YouTubeチャンネル「乳がん大事典【BC Tube編集部】 一般社団法人 BC Tube
一般社団法人BC Tubeは、有志の乳腺科医のチームです。YouTubeを通して、乳房の健康、乳がんの予防・診断・治療に関する正しい情報を発信されています。
◇ 国立がん研究センターのウェブサイト がん情報サービス
◇ 日本乳癌学会「患者さんのための乳癌診療ガイドライン」http://jbcs.gr.jp/guidline/p2016/
身近な人、ピア・サポートとのつながり
先の調査では、情報源として「家族・友人・知人」を挙げた方の割合は3番目に多く、特に女性で高くなっています。乳がんは女性で一番罹患率の高いがん。身近な人が乳がんになったという方、その方の体験を聞いたという方は多いでしょう。 副作用の悩みや、病気の不安など、ほかの誰かと共有したい・相談したいというときもあるでしょう。
注意していただきたいのは、一口に乳がんといっても、その診断や治療法は一人一人異なるということです。そして、同じ治療を受けても、その効果や身体の反応は人によって違います。さらに医療は日々進歩していますので、他の人が受けた治療は既に古いものかもしれません。あなたが受けている検査や治療は、数年前には一般的でなかったものかもしれません。
身近な経験者に加えて、患者さんのサポートグループとつながる方法もあります。 がんピアサポートは、がんを体験した方が、「体験を共有し、ともに考える」ことによって、相談者を支援していく活動です。相談・支援のための研修を受けたピアサポーターがいる患者サロン・患者会を探してみてください。
コロナ禍でピアサポート活動においても特に対面での支援が難しくなっているそうです。SNSをはじめとしたオンラインでのつながりを試みるグループも増えています。がんと向き合う患者・家族が不安を抱え込んだり、孤独を感じるときこそ、このようなつながりやサポートがより必要です。
乳腺外科クリニックとして
- 長生きしたい。
- 子供や夫、家族のために、病気を治したい。
- 仕事を続けたい。
- できれば体に負担の少ない治療を受けたい。
- どんな結果であっても、自分で考えて決めたい。
私自身は、もし、乳がんになったとしても、こういった希望を諦めたり我慢したりしないで、自分らしくいたいと思っています。乳がんの患者さんにも、いろいろな希望があると思います。しかし、情報が不十分であれば選択肢が示されず、あきらめてしまうこともあるかもしれません。主治医とうまくコミュニケーションできなかったり、誰とも相談できずに一人で悩んでいる方もいるかもしれません。
その方の希望を叶えるために、できる限り情報を提供し、一緒に考えていくのが乳腺専門の当クリニックの役割ではないかと思っています。悩みは解決しないかもしれませんが、専門的な知識でお役に立つことが出来ればと思います。当院で乳癌と診断された方も、他院で診断・治療中の方も、お気軽にお問い合わせください。