「私らしさ」に迷うあなたへ
「自分らしく生きる」という言葉を聞くと、なんだか肩に力が入ってしまうことがないでしょうか。
“らしさ”を意識しすぎると、「こうあるべき」「これが私らしいのかな?」と考えてしまい、かえって自分を縛ってしまうこともあります。
でも、私たちはずっと同じではいられません。
年齢を重ねることで、環境が変わることで、病気を経験することで、私という存在は変わっていきます。
乳がんを経験された方へ
歳をとること。
子どもを持つこと。
仕事をすること。
病気やケガをすること。
そして、乳がんになること。
人生には、私たちを変えていく出来事がいくつも訪れます。
「結婚しても、自分らしくいたい」「母親になっても、変わりたくない」「仕事を続けたいけど、私を失いたくない」「病気をしても、以前の自分を取り戻したい」
そんなふうに思っても、現実はそう簡単ではありません。
乳がんと診断されたとき、治療が終わってから...
思うように時間が取れなかったり、体力が落ちたり、価値観が変わったり。
「こんなはずじゃなかった」「前の私と違う」と感じ、これまでの自分と今の自分の違いに戸惑うことがあるでしょう。 「私らしさ」が揺らいでしまったかもしれません。
でも、大切なのは「私らしく」いようとすることではなく、「今の私」をそのまま生きること。
忙しくて余裕がない日も、体の変化に戸惑う日も、どんなに環境が変わっても――
治療で髪が抜けても、手術で胸の形が変わっても、体力が落ちても――
それでも、あなたはあなた。
「私らしさ」を探すのではなく、今ここにいる「私」を大切にしていきましょう。
家族や仕事への向き合い方、乳がんの治療の選択で悩むとき、
「どの選択が私らしいか」と考えると、答えが出なくなることもあります。
でも、「今の私が、未来の私のためにできることは何か?」と考えたら、少し違った景色が見えてくるかもしれません。
変わることを恐れない
でも、そもそも「私」という存在は、一つの形ではなく、多面的なものなのです。
明るい私もいれば、落ち込む私もいる。
仕事に打ち込む私もいれば、家でぐったりしている私もいる。
そして、それらすべての私が集まって、「私」になる。
相手が見ている私も、その人の視線を通した「私」にすぎない。
誰かに「あなたってこういう人だよね」と言われても、それはあくまでその人の見方。
本当の私は、もっとたくさんの側面を持っている。
ですから、変わることは、悪いことではありません。
どんな状況になっても、「今の私」を受け入れ、できることを積み重ねていきましょう。
「もう前の私には戻れない」「今の私は、私じゃない」と思うことがあるかもしれません。
でも、あなたは今も、これからもずっとあなたです。
だからこそ、自分を気にかけてあげてほしい。
疲れたときは休んでいいし、悲しいときは涙を流していい。
どんなときも「大丈夫だよ」と自分に声をかけること。そして、自分を愛すること。
完璧じゃなくても、思いどおりにいかなくても、今ここにいる「私」を大切にすること。
「私らしく」生きるではなく、「私」を生きる。
その選択が、きっと未来のあなたにつながっていきます。