働く女性の健康課題|乳腺専門医として日々感じること

現代の日本では、女性の社会進出が進み、働く女性の数は年々増えています。仕事、家庭、育児、介護など、複数の役割を担いながら働き続ける女性にとって、「健康をどう守るか」は非常に重要なテーマです。
一方で、女性特有の健康課題が十分に理解されず、生活や仕事に支障を来しているケースも少なくありません。これは個人の問題にとどまらず、職場や医療、社会全体で共有すべき課題だと日々感じています。
女性の健康課題はライフステージごとに異なる
女性は一生を通じて、思春期、月経、妊娠・出産、更年期といったライフイベントと、ホルモン環境の大きな変化を経験します。それに伴い、以下のような健康課題が生じやすくなります。
- 月経関連の不調(痛み、過多月経、不規則な周期)
- 妊娠・出産に伴う体調変化や合併症
- 更年期障害による身体的・精神的症状
- うつ病やストレス関連疾患
- 子宮・乳腺などの婦人科疾患、がん
これらは単なる「体調不良」ではなく、生活の質(QOL)や働き続ける力に直結する重要な健康課題です。
乳腺外科の診療では、乳房の痛みやしこりを主訴に来院される方が多くいらっしゃいます。その中には、月経周期や更年期に伴うホルモン変動が背景にあるケースも少なくありません。
お話を伺うと、乳房症状だけでなく、倦怠感、不眠、気分の落ち込みなど、心身の不調を同時に抱え、日常生活や仕事に支障を来している方も多く見受けられます。
まずは自分の体を知り、キャリアや仕事を長期的に見てみませんか?
働く女性の多くが、
- 慢性的なストレスや疲労感
- 健康課題に対する職場の理解・支援の不足
- 体調不良を相談しづらい職場文化
といった困難を経験しています。
また、働く女性自身や管理職の側に、健康リテラシー(健康に関する知識や判断力)が十分に備わっていないことも少なくありません。「なんとなくしんどいけれど、みんな同じだろう」と不調を見過ごしてしまうケースも多いのが現実です。
適切な情報や支援制度があっても、どう活用すればよいか分からず、結果として健康問題が放置されてしまうこともあります。
女性特有の健康課題は、欠勤や業務効率の低下として仕事に影響することがあります。治療や通院が必要な場合には、仕事との両立調整も欠かせません。これは乳がんをはじめとする慢性・周期性疾患に共通する課題です。
長期的に見ると、健康課題が適切に管理されないことで、離職やキャリアの中断につながる可能性もあります。これは個人の人生設計だけでなく、社会全体の労働力にも関わる重要な問題です。
社会人としてのキャリアは数十年に及び、その間に妊娠・出産、育児、介護、学び直しなど、さまざまなフェーズを経験します。私自身も、結婚や出産・育児を通じて、「仕事とは何か」「自分はどう生きたいのか」を改めて考えるようになりました。
病気やライフイベントによってキャリアの形が変わることは、決して特別なことではありません。「仕事を休んで申し訳ない」と感じる必要はなく、誰にでも起こり得ることとして、社会全体で支え合う視点が大切だと思います。
企業・職場に求められる支援
働く女性の健康を守るためには、職場環境の整備と理解の促進が欠かせません。これらは大企業だけでなく、中小企業においても少しずつ広がり始めています。
① 女性の健康に配慮した勤務制度
- 時差出勤・フレックスタイム制
- 在宅勤務・テレワークの活用
- 半日・時間単位で取得できる有給休暇
月経痛や更年期症状、治療・通院に配慮した柔軟な働き方は、乳がん治療を含め、離職防止の大きな支えになります。
② 女性特有の健康課題に関する相談窓口
- 産業医・保健師への相談体制
- 外部医療機関やカウンセリングサービスと連携した匿名相談
「誰に相談すればよいか分からない」状態をなくすことが、早期受診と適切な治療につながります。
③ 健康リテラシー向上のための研修
- 女性の健康課題に関する社内研修
- がんと仕事の両立に関する勉強会
- eラーニングによる基礎知識の提供
正しい知識を職場全体で共有することは、病気を抱える女性が不必要な遠慮や誤解に苦しまないために非常に重要です。
④ 婦人科・乳がん検診の受診促進
- 勤務時間内での検診受診の認可
- 検診費用の補助
- 検診バスの導入
早期発見・早期治療は、働き続ける力を守ることにつながります。
⑤ 治療と仕事の両立支援制度の明確化
- 休職・復職ルールの明文化
- 主治医意見書を踏まえた業務調整
- 段階的な職場復帰支援
これらの取り組みは、単なる福利厚生ではなく、多様な人材を活かすための企業基盤づくりでもあります。
国の方針とつながる「攻めの予防医療」「性差医療」
近年、国としても「攻めの予防医療」を掲げ、健康寿命の延伸や現役世代が長く活躍できる社会づくりに力を入れています。その中で特に重視されているのが、性差に由来する健康課題への対応(性差医療)です。
攻めの予防医療に向けた性差に由来するヘルスケアに関する副大臣等会議
これまで医療や職場の制度は、必ずしも男女の体の違いやライフステージの差を十分に反映してきたとは言えません。しかし、女性には女性特有の、男性には男性特有の健康課題があり、それぞれに応じた予防・医療・就労支援が必要です。
女性の月経、更年期、妊娠・出産、乳がんや婦人科疾患といった課題は、その代表例ですが、健康課題は決して「働く女性」だけの問題ではありません。男性にも、生活習慣病、メンタルヘルス、がん、加齢に伴う体調変化など、仕事と密接に関わる健康問題があります。
重要なのは、「誰か特定の人の問題」として切り分けるのではなく、すべての働く人が、自分の体の特性を理解し、予防と早期対応によって働き続けられる社会をつくることです。
性差医療の視点を取り入れた予防医療は、結果として個人の健康だけでなく、企業の生産性向上、医療費の抑制、社会保障制度の持続性にもつながります。
乳腺専門医として伝えたいこと
日々の診療を通じて強く感じるのは、健康はお金では買えない、まさに “Priceless(プライスレス)” なものだということです。
国が掲げているように、病気になってから治すのではなく、自分の体を知り、早めに対策を取ることで、人生や仕事の選択肢を広げていくことができます。
個人が、社会が、ホルモン変動に伴う体調管理や女性特有の健康課題について正しく理解することは、働き続ける力を守るだけでなく、それぞれの自分らしい人生を支える基盤になります。
乳腺診療でいえば、乳がん検診を受けたり、ブレストアウェアネス(自分の乳房を気にかけること)により、乳がん早期発見することにつながります。侵襲がより少ない、より効果の高い治療も増えてきましたので、乳がんを経験した後も、いろいろなことにチャレンジすることが出来ます。
働く女性の健康を守ることは、個々の生活の質を高めるだけでなく、社会全体の活力にもつながります。体や心の変化に気づいたときには、どうか一人で抱え込まず、早めに医療機関へご相談ください。
また、健康とは、単に病気がない状態ではありません。世界保健機関(WHO)は健康について以下のように説明しています。
健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、
肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてがよい状態にあること。
病気で治療中であっても、生き生きと過ごされている方は、たくさんいらっしゃいます。
年齢を重ねることや、がんの罹患、ホルモン変動による心身の変化は避けられませんが、それらとどう向き合い、どう付き合っていくかは選ぶことができます。 健康の意味は、一人一人違うんだなと知っておきましょう。
私たちは、皆さんが健やかに、そしてニコニコと、いきいきと毎日を過ごせるよう、乳腺専門医として全力でサポートしていきます。
企業の皆さまへ
従業員の方に、乳がんや女性の健康について正しい知識を伝えたいとお考えでしたら、当院院長が出張セミナーとしてお伺いすることも可能です。
当院の特徴
- 乳腺専門医による正確な画像診断
- 全検査は女性技師または女性医師が担当
- 予約制で待ち時間が少なく、所要時間は約1時間
- 異常が見つかった場合、精密検査・治療まで保険診療で対応可能
あいかブレストクリニックでは、地域の皆さまが安心して日々を過ごせるよう、乳腺専門医として丁寧な診察・検査を行っています。
胸の症状が気になるときはもちろん、症状がなくても 年に一度の乳腺検診 を受けていただくことをおすすめしています。
女性スタッフだけなので、安心して受診していただけます。
どうぞお気軽にご相談ください。
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