変わる乳がん診療2026②新しい薬の登場で「治癒」を目指せる時代へ
HER2陽性乳がん とトリプルネガティブ乳がん の治療の進歩
乳がんにはいくつかのタイプがあり、 トリプルネガティブ乳がんとHER2陽性乳がん という二つの乳がんのタイプは、再発しやすく、再発した場合 治療が難しいとされてきました。
しかし近年、新しい薬の登場によって、再発を防ぎ、これらのタイプも治癒を目指せる可能性が大きく広がっています。
HER2陽性乳がんとは?
HER2陽性乳がんは、
がん細胞に HER2という増殖のスイッチのたんぱく質がが多く出ているタイプです。
以前は進行が早い乳がんとされていましたが、抗HER2薬(ハーセプチン、パージェタ)という、HER2を狙う薬の登場で、治療成績は大きく改善しました。
しかし、術前に抗HER2薬と抗がん剤を組み合わせた治療を行っても、がんが完全に消失せず再発する症例があります。また、脳転移を起こしやすく、再発した場合の治療の選択肢が少なく、新たな治療薬が求められていました。
治療の進歩:抗体薬物複合体(ADC)の登場
抗体薬物複合体とは?
最近注目されているのが
抗体薬物複合体(ADC)という新しいタイプの薬です。
これは、
- 抗HER2抗体
- 抗がん剤
を 一つに組み合わせた薬で、
がん細胞にピンポイントで抗がん剤を届けます。
代表的な薬
- T-DM1(カドサイラ)
- エンハーツ
HER2陽性乳がんの治療の流れ
HER2陽性乳がんでは、腫瘍の大きさにもよりますが、薬物治療がよく効くため 手術前に抗がん剤+抗HER2薬による治療 を行ってから、手術を行うことが多いです。
以前は、術前の治療でがんが消えなかった場合、術後に追加の抗HER薬の点滴を行うのみでしたが、現在では、T-DM1の追加も考慮します。
また、再発した場合、既存の抗HER2薬+抗がん剤しか選択肢がありませんでしたが、エンハーツなどの新たな治療薬の使用もできるようになりました。
HER2陽性乳がんでは、 手術前後の治療を組み合わせることで再発を防ぐ力が強化できるようになり、再発した場合でも次の有効な治療が用意されています。
また、抗HER2薬は点滴の薬剤がほとんどですが、ツカチニブという新たな経口の抗HER2薬も登場しています。
これまで脳転移がある患者さんは、脳に薬剤が移行しにくいため、治療の選択肢が限られていましたが、この薬は 脳転移病変にも効果を発揮するとされています。
HER2陽性乳がんは、治療の選択肢が増えて治癒を目指せるようになったことが大きな進歩です。
トリプルネガティブ乳がん(TNBC)とは?
トリプルネガティブ乳がんは、
- ホルモン療法が効かない
- HER2を狙う薬も使えない
という特徴があり、
以前は抗がん剤しか治療の選択肢がありませんでした。
そのため、
- 再発しやすい
- 治療が難しい
と考えられてきた乳がんのタイプです。
治療の進歩:免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬:キイトルーダ)
免疫療法とは?
免疫療法は、
がんを直接攻撃するのではなく、
自分自身の免疫の力を利用してがんと闘う治療です。
乳がんで使われている代表的な免疫療法が、
ペムブロリズマブ(キイトルーダ)です。
何が変わったの?
現在では、一部のトリプルネガティブ乳がんに対して、手術前後に抗がん剤+免疫療法(キイトルーダ)
を組み合わせる治療が行われています。
この治療によって、
- 手術前の治療でがんが完全に消える割合(pCR)が増加
- 再発リスクが下がる
ことが分かってきました。 治癒を目指せる治療に進化 しているのです。
※pCRとは?
pCRとは、手術で取り出した標本の中にがんが残っていない状態を指します。
特にHER2陽性乳がんや、トリプルネガティブ乳がんは術前の治療が奏功してこの状態になると、将来的な再発リスクが低くなることが知られています。
まとめ
- トリプルネガティブ乳がんでは免疫療法の登場で治癒を目指せる時代に
- HER2陽性乳がんでは抗体薬物複合体という新しい武器が加わった
- どちらのタイプも、手術前後の治療戦略が重要
乳がん治療は、「治癒を目指せる病気」へ 確実に変わってきています。
トリプルネガティブ乳がんや HER2陽性乳がんで行われる治療は、専門施設での薬物治療がメインであり、クリニックが治療を行うことはありません。しかし、初期の治療が奏功した方では再発のリスクはぐっと下がるので、状態が落ち着いた後のフォローアップであれば、病院と連携してクリニックで行うことが出来ます。
また、この二つのタイプは、進行が早く、最初の診断をいかに的確に行い、適切な治療につなげるかが大切ですが、 定期検診での発見が難しい見つけにくい乳がんでもあります。ここに、乳がん早期発見を目指す専門クリニックである私たちの役割があると考え、さらなる研鑽を積んでいきたいと思います。
次回は、「遺伝情報が治療に直結する乳がん診療」と「体への負担を減らす治療の選択肢(RFAなど)」
についてお話しします。
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