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変わる乳がん診療2026③遺伝子検査と手術に変わる治療の登場

2月 19, 2026adminBreast check

前回までは、新しい薬剤が次々に登場していることをお話ししました。この数年で最も変わったのは、新しい薬剤がどのような患者さんで効果があるのか、遺伝子レベルで調べることが出来るようになったことです。これによって、より効果が高い治療がうまれています。

がんの発生には、さまざまな遺伝子の異常が関与しています。

遺伝子は、細胞の働きを決める設計図のようなものです。この設計図をもとに、体の中ではさまざまなたんぱく質が作られ、私たちの体は正常に機能しています。

私たちの体では、毎日たくさんの新しい細胞が作られていますが、その過程でときどき遺伝子のコピーエラーが起こります。通常は修復されますが、修正されないまま残ると、細胞が制御なく増え、がんが発生する原因になります。

遺伝子の異常には、生まれつき親から受け継いだもの(遺伝性)と、成長や生活の中で後天的に起こるものがあります。生まれつきの遺伝子異常がある場合、がんが発生しやすくなったり、治療方針に影響したりすることがあります。

ただし、乳がんの多くは遺伝が直接の原因ではありません。大部分の乳がんは、人生の過程で後天的に遺伝子異常が積み重なって起こると考えられています。

さらに、乳がんの治療を行う過程で、がん細胞の中に新たな遺伝子異常が生じ、治療に抵抗を示すようになることもあります。

こうした遺伝子の異常を詳しく調べることで、その方により適した治療を選択できる時代になってきました。

① BRCA検査とリムパーザ(オラパリブ)

BRCA検査とは?

BRCA1・BRCA2は、乳がん・卵巣がんが起こりやすくなる体質に関わる遺伝子です。

この遺伝子に変異があるかどうかを調べるのがBRCA検査です。

最近の大きな変化

BRCA1/2遺伝子変異がある早期乳がんでは、
術後に リムパーザ(オラパリブ)を1年間内服する治療を追加で行うようになりました。

遺伝子変異が治療選択に直結する時代になったのですが、この異常はは親から子に引き継がれることがあります。

🔗 乳がんの遺伝子検査を受けるかどうか? に詳しく書いています。

②分子標的薬とコンパニオン診断

がん細胞では、変化が起こった遺伝子の情報をもとにして、通常とは異なる働きを持ったタンパク質が作られます。リムパーザは、 BRCA1/2遺伝子変異 がある乳がんでみられる、通常とは異なる働きを持ったタンパク質(分子)を標的として働きを妨げ、がん細胞に選択的に作用する、分子標的薬の一つです。

このような、特定の薬剤の効果をあらかじめ調べる検査は「コンパニオン診断」とよばれます。リムパーザはコンパニオン診断の代表例といえる治療です。

分子標的薬は、がん細胞に特有の通常とは異なる働きをするタンパク質を狙って作用する薬です。
これらのタンパク質は、がん細胞に起こった遺伝子の変化によって作られるため、
がん細胞の中にその遺伝子変化があるかどうかを調べることがとても重要になります。

このように、
特定の分子標的薬が効くかどうか、また副作用のリスクを事前に調べる検査を
コンパニオン診断 と呼びます。

分子標的薬とセットで行われるコンパニオン診断は、2011年頃から普及し始めました。

コンパニオン診断では、

  • 遺伝子検査で 対象となる遺伝子変化が見つかった場合
     → その分子標的薬の効果が期待できる
  • 遺伝子変化が 見つからなかった場合
     → その薬の効果は期待できない

と判断されます。

つまりコンパニオン診断とは、
「この薬を使う前に、その人に本当に効くかどうかを確認する検査」 です。

がん治療は「みんな同じ」から「その人に合った治療」へ

近年のがん治療は、
「誰にでも同じ治療」から「一人ひとりに合った治療」へと大きく変わってきています。

分子標的薬や免疫療法などの新しい治療薬は、

  • 高い効果が期待できる一方で
  • 誰にでも効くわけではない
  • 副作用や医療費の負担が小さくない

という特徴があります。

そのため、 「効果が期待できる人にだけ使う」ための検査としてコンパニオン診断はとても重要な役割を担っています。

乳がん診療における代表的なコンパニオン診断

○ BRCA検査

  • BRCA1 / BRCA2 遺伝子変異の有無を調べる検査
  • リムパーザ(オラパリブ) が使用できるかを判断、家族(血縁者)への影響も考慮

○ PD-L1検査(免疫療法)

  • 主に トリプルネガティブ乳がん
  • キイトルーダ が使用できるかを判断

○ その他の遺伝子変異と治療薬

  • PIK3CA変異 → アルペリシブ(ピクトレム)
  • ESR1変異 → エラセストラント
  • HER2低発現(HER2-low) → エンハーツ

② がん遺伝子パネル検査

分子標的薬の開発にともない、がんの特徴を遺伝子レベルで詳しく調べる技術もさらに進歩してきました。

2017年以降、コンパニオン診断に続いて登場したのががん遺伝子パネル検査です。

がん遺伝子パネル検査は、がんの組織や血液を使って多数の遺伝子を一度に調べる検査です。

目的

  • 治療の選択肢が限られてきた再発・転移乳がんでその人に合う薬がないかを探す
  • がんのタイプ、臓器の種類に関わらず、共通の遺伝子変異があれば治療につながる可能性がある

同じ臓器のがんでも、遺伝子の変化の違いによって選ぶ薬は異なります。

また、違う臓器のがんでも、同じ遺伝子変化があれば同じ薬が効くこともあります。

注意点

  • 早期乳がんで行う検査ではありません
  • 「必ず効く薬が見つかる」検査ではありません

研究結果から、
がん遺伝子パネル検査によって
実際に治療につながる割合は約10% とされています。

それでも、新しい治療の可能性を探す手段として重要な役割を持っています。

参考になるリンク:おしえて がんゲノム医療|中外製薬

がん遺伝子パネル検査は、

  • がんゲノム医療中核拠点病院
  • がんゲノム医療拠点病院
  • がんゲノム医療連携病院

で受けることができます。

がん遺伝子パネル検査の種類によっては、

  • 患者さん本人のがんに関わる遺伝子変化だけでなく
  • ご家族(血縁者)のがんリスクに関係する遺伝子変化

が見つかることがあります。

そのため、検査を受けるかどうかは ご家族とも相談したうえで決めることが大切です。


③ 体への負担を減らす選択肢:RFA(ラジオ波焼灼療法)

RFA(ラジオ波焼灼療法)は、手術をせず細い針を刺してがんを熱で焼いて治療する方法です

対象になるのは?

  • 小さな早期乳がん
  • 条件を厳密に満たす場合のみ

大切なポイント

  • 誰でも受けられる治療ではありません
  • 「切らない=楽」という治療ではありません
  • 適応判断が非常に重要で、学会が認定した施設でのみ受けられる

詳しくは、以下のブログをご覧ください。

🔗 乳がんの治療①乳がんを切らずに治す

まとめ

現在の乳がん診療は、個別化が進んでいます。より低侵襲な治療やがん細胞に選択的な薬剤の登場などによって、不要な治療を避けて、体への負担を減らす可能性を探るという方向に進んでいます。

数年前に比べて、乳がんでは治療方針を決めるにあたって必要な検査が増え、治療そのものの選択肢も増えました。

選択肢が増えると、病院で医師の説明を受けても、なかなかご自身で決めることは難しく感じる方もいらっしゃいます。

遺伝子検査を受けるべき?と迷われている方は、ぜひお気軽に当院へご相談ください。 一人ひとりに合った最適な選択を大切にしていただけるよう、 サポートさせていただきます。

また、早期の乳がんは、今後ますます、心と身体に負担の少ない治療を選択できる可能性が増えるはずです。

より多くの皆さんがその恩恵を受けられるように、乳がん早期発見に努め、その後も人生のパートナーとして、みなさんと一緒に安心できる未来を作っていくことが当院の役割と考えています。

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