乳がんの診断や治療をAIに相談?|AIのトリセツと医師の役割

最近、「来院前に症状についてAIに聞いてみました」「どの治療が良いのか、AIに相談しました」という患者さんの声が増えています。
症状から病名を調べる、検査結果の解釈、抗がん剤治療をするべきか、乳がん術後の生活・食事・運動について――
AIはいつでも何でも質問できます。時には医師の説明よりも分かりやすい回答が得られます。否定しない、優しく寄り添うような返答をくれることが多いため、心の支えになる方もいると思います。一方で、医師の言っていることと違う回答で、困惑してしまったという声も。
乳がん診療でAIを使うメリットやデメリット、患者さんが利用するときの注意点や、AI時代で将来的に医師が果たす役割とは何なのか?…いろいろと考えてみました。
AIが乳がん治療を支える主な場面
AIは乳がん治療の 精度向上・迅速化・個別化 に貢献できる、とても有望なツールです。
しかし、 AIはあくまで医師の判断を補助するものであり、単独で診断や治療方針を決めるものではありません。
以下に、現在実用化されている・期待されている活用例をまとめます。
1. 画像診断(マンモグラフィ・超音波・MRI)のサポート
- AIが医師の見落としやすい小さな病変を検出するのを助ける
- 再読影に時間がかかる症例の優先順位付けを行う
- 偽陽性・偽陰性を減らすことが期待される
→ 早期発見に寄与する可能性があります。
2. 病理診断の効率化
- AIが顕微鏡画像を解析し、癌細胞の特徴や再発リスクを推定
- 腫瘍の subtype(ホルモン受容体、HER2 など)の予測を支援
→ 病理医の負担軽減や精度向上に役立ちます。
3. 個別化治療のサポート
- 過去の膨大な患者データをもとに、治療への反応性を予測
- ホルモン療法・抗HER2療法・化学療法などの適応判断の補助
→ 患者ごとに最適な治療を選ぶ際の参考となります。
4. 患者サポート(生活管理・副作用管理)
- 副作用の兆候を早期にキャッチするアプリ
- 心の負担を軽減するチャット型サポート
- 通院・治療スケジュール管理ツール
→ 患者さんの日常生活の負担を下げる役割も期待されています。
AIは“もう一人の相談相手”として有用?
AIは医学的情報を簡潔にまとめ、ガイドラインや論文をもとに「平均的な最適解」を提示するのが得意です。
特に 乳がん術後の不安や疑問を、いつでも誰でも相談できる点 は大きな安心につながりますね。
たとえば
- 「今こういう治療をしていて、どんな質問を医師にすべき?」
- 「AIを使って不安を整理したい」
- 「副作用があって生活がつらい、どう整理すれば?」
などをサポートできます。
ただし、AIはあくまで一般論しか語れないという限界があります。
もしもご自身でAIを利用される場合は、ここを理解して使うことがとても重要です。
AI を使うメリット
1. いつでも質問できる
外来は限られた時間ですが、AIは24時間いつでも相談できます。担当医はいつも忙しそうだし、この程度のことは聞きにくいな...という方にとっては、疑問がすぐ解消されるだけでなく、気持ちが楽になるかもしれません
2. 医学情報の整理が得意
- ホルモン受容体の意味
- オンコタイプDXや遺伝子検査の概要
- 抗がん剤のレジメンや副作用
乳がんの治療では、一般の方にはなじみのない、様々な専門的な用語が出てきます。こうした基礎知識をすぐに丁寧に説明してくれます。
3. 否定しない、寄り添う対応
精神的に不安が大きい時、AIの 明快で、冷静に、寄り添って 説明してくれる返答が心の支えになることもあるかもしれません。
AIを使う際の注意点・デメリット
1. AIは「誤った情報」も出すことがある
モデルや学習データの影響で、医学的に不正確な回答が混ざることがあります。
「もっともらしい文章」で誤情報を言うことがあるため、かえって危険な場合も。
2. 質問の仕方(コマンド)で回答が変わる
「抗がん剤は必要ですか?」
「50代、ホルモン受容体陽性、閉経後で、術後のオンコタイプDXが●●の場合は、抗がん剤は必要ですか?」
といった条件の入れ方で答えは大きく変わります。
つまり、尋ね方を工夫しないと、求めている答えが得られないこともありますし、違う回答になることもあります。
3. 個別性までは理解できない
AIは、その方の
- 家族の事情
- 仕事の負担
- 価値観
- 副作用への耐性 身体的、精神的
- “どう生きたいか”
といった背景を理解することができません。
治療の「正解」は人それぞれ。
その部分を会話だけで読み取れないのがAIの根本的な限界です。
私たち医師は、患者さんの反応や外見(声のトーン、表情、服装)や事前に知っている年齢、家庭背景、就業状況などからいろいろ推測して、対応しています。場合によっては、必要な質問を追加し、より患者さんを理解できるような情報を引き出していきます。
乳がん患者さんのための「AIリテラシー」
AIリテラシーとは、人工知能(AI)に関する基礎知識を理解し、安全かつ効果的に活用する能力を指します。AIを使うときに知っておくべき考え方をまとめました。
AIを上手に使う4つのコツ
1. 質問は具体的にする
条件(年齢・病理・治療歴)を入れると精度が上がります。
2. 複数のAI・公的サイトで情報を確認する
一つの回答を鵜呑みにせず、複数の情報源を比べるのが大切。
3. AIの答えは「判断材料の一つ」にする
治療の最終決断は、主治医と相談しながら進めましょう。
4. 断定的な表現には注意する
「絶対」「必ず治る」は医学情報ではまず使われません。
誤情報の可能性が高いサインです。
5. 過度に依存しない
いろいろ聞いていると夢中になってやめられない、と感じるかもしれません。気をつけましょう!
参考:インターネット上の医療情報を見極めるポイント
- 発信元は医療機関・学会など信頼できる組織か
- 更新日が新しいか (当ブログも、日付の古いものは古い情報かもしれないと思ってください)
- データの根拠が示されているか
- 不安を煽る表現や、営利目的が強すぎないか
特に乳がん領域は情報が多く、不確かな情報に振り回されやすい分野です。
情報の「取捨選択」が大切!
AI時代に求められる「良い医師」とは?
ここからは医師としての視点です。
AIは非常に優秀ですが、それはあくまで平均的なケースに基づいた 「一般論」 です。
AIが出す情報だけでは、その人らしい治療にはたどり着けません。
そして実は、
一般論しか語れない医師は、AIと同じレベルで止まってしまう
とも言えます。
医師に求められるのは、データを提示するだけではありません。
- その人の価値観
- 家族の思い
- 生活環境
- 治療への希望
- 仕事との両立
- 副作用への不安
こうした“人の物語”をくみ取り、適した選択肢を提案すること。
再発リスクの判断も、科学的に絶対の正解があるわけではありません。
時に予想外の経過が起きるのも、人間の体の複雑さゆえです。
だからこそ、
迷い・恐れ・希望に寄り添い、最適な治療を一緒に考える
それが人間の医師が担うべき最も重要な役割だと思っています。
まとめ
AIは乳がん治療の心強いツールになります。
しかし、患者さんの人生に寄り添い、気持ちの揺れに向き合い、
その人らしい選択を形にしていくのは、今までも、これからも、人間である私の役割ではないかと思います。
これからも患者さんを支える医療を作っていきたいと思っています。
当院の特徴
- 乳腺専門医による正確な画像診断
- 全検査は女性技師または女性医師が担当
- 予約制で待ち時間が少なく、所要時間は約1時間
- 異常が見つかった場合、精密検査・治療の対応可能
あいかブレストクリニックでは、地域の皆さまが安心して日々を過ごせるよう、乳腺専門医として丁寧な診察・検査を行っています。
胸の症状が気になるときはもちろん、症状がなくても 年に一度の乳腺検診 を受けていただくことをおすすめしています。
女性スタッフだけなので、安心して受診していただけます。
どうぞお気軽にご相談ください。
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