病気ではなく“その人自身”を見つめる|ピンクリボン月間に寄せて

10月は「乳がん啓発月間」、いわゆるピンクリボン月間です。街を歩けばピンク色のリボンやキャンペーンを目にすることも多いのではないでしょうか。
ピンクリボンとは?
ピンクリボン運動は1980年代のアメリカで始まりました。
乳がんで亡くなった方の家族や支援者が中心となり、
「乳がんをもっと知ってほしい」「早期発見で助かる命を増やしたい」
という思いから広がった活動です。
1991年、ニューヨークのマラソンでピンク色のリボンが配られたことが、シンボルの始まりといわれています。
今では世界各国でランドマークをピンクにライトアップするなど、乳がんを知り、支え合うための取り組みが広がっています。
日本にピンクリボン運動が紹介されたのは2000年前後。2003年に東京タワーが初めてピンクにライトアップされ、全国に活動が広がりました。
検診を呼びかける運動として浸透し、検診率向上に大きな役割を果たしてきました。
でも、本来のピンクリボンの意味はもっと広いものです。
- 乳がんの正しい知識を広めること
- 治療を受けている方やご家族を支えること
- がん経験後の人生(サバイバーシップ)を理解すること
- 研究や新しい治療法を支える寄付や資金援助
つまり、乳がんと共に生きるすべての人を応援する文化をつくることが、本当のピンクリボン運動なのです。
必要なのは「支援」と「つながり」
乳がんを経験した方には、それぞれにキャンサージャーニー(がんと共に歩む人生)があります。
- 治療の過程
- 再発への不安
- 仕事や家庭との両立
- 心と体の回復
こうした歩みに寄り添うことが、私たち医療者、そして社会全体に求められています。
私たち一人一人が出来る支援には、
- 患者さんとご家族へのサポート
- サバイバーシップ(がん経験後の人生)への理解
- 研究や新しい治療法のための資金援助
などがあります。
乳がんと共に生きるとは?
ピンクリボン運動では、日本では「検診を受けること」が強調されがちです。もちろん早期発見・早期治療はとても大切です。
けれども、それだけで語ってしまうと、すでに治療を経験された方や今も治療を続けている方が、「自分は対象外」と感じてしまうことがあります。
実際に「この時期はちょっと居心地が悪い」と打ち明けてくださった患者さんもいらっしゃいました。
治療中でも、笑ったり、美味しいものを味わったり、大切な人と時間を過ごしたり…。
それらもすべて、乳がんと共に歩んでいる“その方の人生”の一部です。
乳がんと向き合っている方も、病気だけにとらわれず、一人の人間として人生を生きているということです。
共感から広がる支援
女優アンジェリーナ・ジョリーさんは、ご自身が遺伝性乳がん・卵巣がんのリスクを抱え、予防的乳房切除の手術を受けた経験を持ちます。母を乳がんで亡くした彼女は、こう語りました。
「母は『みんな、いつもがんのことばかり聞いてくるの』と言ったんです。
もし身近に辛いことを抱えている人がいるなら、その人の人生における他のことも聞いてあげてください。彼らは一人の人間で、まだ生きているのです」
この言葉には、医師としてだけでなく、一人の人間として深く共感しました。病気のことだけに目を向けるのではなく、「その人の生きている毎日」に目を向けることが、何よりの支えになるのだと思います。
子供が寝る前にベッドで、今日一日の出来事を話すことを、母親が聞くように。
日常の積み重ねこそが、人生なのです。
病気によって外見や暮らしが変わったとしても、 変わらずに接していく。
治療を受ける方にとって「あなたはそのままで大切な存在だ」と伝えてくれるパートナーや家族、友人の存在は、薬や手術以上に心を支える力になります。
ピンクリボンを、誰のために?
私が米国に留学していたとき驚いたのは、研究の多くが寄付によって支えられていたことでした。
大口の寄付だけでなく、学生や個人が少額を寄付するのも当たり前。そこには「自分にできることをやる」という意識が根付いていました。
日本でももっと「寄付」や「支援」が自然な選択肢になれば、患者さんのための研究や社会的支援は大きく前進すると信じています。
ピンクリボン月間は、乳がんを経験した方々の声を聴き、支援を届けるための時間であるべきです。
そして、社会全体で「がんと共に生きること」を考え、行動を起こすきっかけになってほしいなと思っています。
検診を受けることはもちろん大切。
でもそれだけではなく、
- 支援団体への寄付
- チャリティーイベントへの参加
こうした小さな一歩も、立派なピンクリボン活動です。
最後に
乳がんは早期発見すれば治療の選択肢も広がり、予後も改善します。だからこそ検診は大切です。
けれども診断を受けた瞬間から「病気の人」としてだけ扱われるのは、とても辛いことです。
乳がんに直面している方を、どうか病気ではなく“その人自身”として見つめてください。
そして、変わらないまなざしで寄り添っていただければと思います。
10月のピンクリボン月間、ちょっと行動を変えてみようと思っていただけたら嬉しいです。
当院では、乳がんの早期発見のための乳がん検診(マンモグラフィ・エコー)を行っています。
10月19日は日曜乳がん検診を実施します!
また、診断後の治療や経過観察中の方、再発に不安を抱える方のご相談もお受けしています。
- 「検診を受けた方がいいのかな…」
- 「しこりが気になる」
- 「治療後の生活について相談したい」
どんな小さな不安でも構いません。どうぞお気軽にご相談ください。
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