乳腺嚢胞は乳がんになりますか?

「乳房にしこりがある…もしかして乳がん?」そんな不安を感じたことはありませんか?
検診や自己触診でしこりを見つけ、「乳腺嚢胞(にゅうせんのうほう)」と診断される方も多くいらっしゃいます。
たかがのう胞と侮るなかれ?― 実は、のう胞はよく外来で目にする分、意外に診断に悩む場面に遭遇します。
今回は、乳腺嚢胞とは何か?乳がんとの違いは?心配すべき症状や治療の必要性は?
など、よく聞かれる質問にお答えします。
乳腺嚢胞とは?
「乳腺のう胞」とは、乳腺内(乳管という、母乳を運ぶ管の中)に分泌物(液体)がたまり、袋状になる状態のことをいいます。
内容物は液体で、触ると表面が滑らかで、やわらかく、弾力があることが多いです。
水風船のようなイメージでしょうか?
【原因】
主に、卵巣から分泌される女性ホルモン(エストロゲン)が関係しています。ホルモンの変動によって乳腺が刺激され、分泌物が排出されずにたまることで嚢胞が形成されます。
排卵のころや生理前に胸が張ったりチクチクすることはないでしょうか?
実は、この時期は乳房が女性ホルモンの刺激を受けて、妊娠に備えて細胞を分裂させたり、分泌物を出したりしています。乳房全体に含まれる水分量が増えたり、血流も増えてきます。
月経が来ると乳房は元の状態に戻りますが、この変化を繰り返すうち、乳管が詰まり分泌物が残った状態になります。これがのう胞の正体。
そのため、閉経後は次第に見られなくなるのが特徴です。
【症状】
- 小さなうちは無症状のことが多い
- 大きくなるとしこりとして触れる
- 月経前に痛みを感じることもある
- 乳がん検診で偶然発見されるケースもよくあります
乳腺嚢胞は乳がんになりますか?
通常、乳腺嚢胞が乳がんに変わることはほとんどありません。
嚢胞は良性の変化であり、多くの場合、経過観察で問題ないとされています。
しかし、以下のようなケースでは念のため詳しく調べる必要があります。
- 嚢胞の中にかたまりの部分(充実成分)がある→分泌物が固まったものか、腫瘍の細胞が詰まっているのか?
- 急激に大きくなる
- 血の混じった分泌液が出る
- エコーでみた形が典型的ではない
- マンモグラフィで石灰化など、悪性と区別を要する所見を認める など
乳腺嚢胞と乳がんの違い
乳腺嚢胞と乳がん、エコー検査では、典型的には以下のように見えます
- 乳腺のう胞:丸くて境界がはっきりしている、楕円形をしている
- 乳がん:いびつで境界がぼやけている
形だけではなく、内容物の状態、血流の有無、硬さを確認して診断します。

初期の乳がんは、のう胞とよく似た形をしているときもあります。特に乳房の深いところにある病変は、超音波が届きにくく、迷うケースは多々あります。
乳腺のう胞が乳がんになるというよりも、、、のう胞と考えていたが、経過をみると変化が見られ、さらに検査を行うと、乳がんであったということが多いです。
来院する患者さんでエコーでのう胞がある方は多くいらっしゃいます。実際に乳がんが見つかる方はそれほど多くないのですが、 のう胞を複数認める方では、かなり注意して経過をみています。がんも小さいうちは分かりにくいことがあるからです。
診断と治療について
【診断】
乳腺嚢胞はエコー(超音波検査)で概ね確定できます。
しかし、前述のように、乳がんと区別を要すると判断した場合には追加で細胞診(穿刺吸引細胞診)や針生検などを行うことがあります。
【治療】
- 基本的に治療は不要です
- 痛みや違和感が強い場合は、中の液体を吸い取って小さくする処置(穿刺排液)が行われます
- 感染を起こして痛みや赤みが出るときは、治療が必要になることも
- 液体を抜くことで痛みが軽減したり、しこりが消えることがありますが、また出来てしまう場合も
注意点とセルフチェック
乳腺嚢胞は良性であり、がん化のリスクはほぼありません。
とはいえ、乳房の健康を守るためには次のことを心がけましょう。
- 月に一度のセルフチェック(生理後がおすすめ)
- 年1回の乳がん検診(マンモグラフィ+超音波検査)
- しこりや痛み、乳頭からの分泌物などがあれば早めの受診を
まとめ
乳腺嚢胞は乳腺に液体がたまってできる良性のしこりです。
ほとんどが経過観察でOKですが、気になる症状があれば相談してください。
定期検診と自己チェックが大切!
あなたの不安を少しでもやわらぎ、安心して日々を過ごすことが出来るように、お手伝いさせていただきます。