乳輪下膿瘍|再発しやすい乳房のトラブル、乳がんとの違い
今回は、乳腺の病気の中でも再発しやすく、誤解も多い「乳輪下膿瘍」について、患者さまからよくいただくご質問をもとにまとめました。
「膿が出る」「乳輪が赤く腫れて痛い」などの症状がある場合、乳輪下膿瘍だけでなく、まれに乳がんの可能性も否定できません。放置せず、早めの受診をおすすめします。
■ 乳輪下膿瘍とは?
乳輪下膿瘍(にゅうりんかのうよう)とは、乳輪の下に膿がたまる病気です。
乳管の中に細菌が感染することで炎症が起き、内部に膿がたまってしまう状態です。切開や抗生物質で一時的に良くなっても、再発しやすいのが特徴です。
■ どのような人に多いの?
- 20代後半〜40代前半の女性に多く見られます
- 特に出産経験がない方や、喫煙されている方に多く発症します
- 女性に多い病気ですが、まれに男性にも起こることがあります
■ 主な症状
- 乳輪やその周囲の腫れ・赤み
- 押すと強い痛み(圧痛)
- 乳頭のただれや膿の排出
- 微熱やだるさなどの全身症状
- しこりのように触れる場合もあり、乳がんとの区別が必要です
■ 原因は?
① 喫煙
- 喫煙は乳腺の構造を壊し、閉塞・炎症のリスクを高めます
- 乳輪下膿瘍の危険因子とされています
② 免疫力の低下
- 睡眠不足・疲労・ストレス・糖尿病・薬剤(ステロイドなど)
- 免疫が落ちると、細菌感染を起こしやすくなります
③ 乳管の異常
- 陥没乳頭の方などでは、古い分泌物や角化物が乳管内にたまりやすくなり、感染の温床に
④ 細菌感染
- 黄色ブドウ球菌などの皮膚常在菌が傷口や乳管内に入り込む
■ 治療について
症状の程度や再発頻度により、治療は以下のように選択します。
◎ 抗生物質
- 軽度の場合は、内服または点滴で炎症を抑えます
◎ 切開・排膿
- 膿がたまっている場合は、局所麻酔で切開し排膿処置を行います
◎ 根治術
- 再発を繰り返す場合や、慢性化して治りにくい場合には、原因となる乳管を外科的に摘出することもあります
■ 経過と再発
- 一時的に治っても、疲労や体調不良をきっかけに再発することが多い病気です
- 膿が出ている期間が長いと、皮膚が硬くなり、乳輪・乳頭の変形につながることもあります
- 適切な初期治療+原因へのアプローチ(禁煙・休養など)が再発予防に不可欠です
■ 乳がんとの違い|見逃してはいけない兆候
乳輪下膿瘍のように見えても、実は乳がんが隠れているケースもあります。
特に注意が必要なのは以下のような症状です:
- しこりが硬く、動きが悪い
- 乳頭から血性の分泌物が出る
- 乳頭が引き込まれている(陥没)
- 皮膚が赤く厚くなり、「オレンジの皮」のような状態
- 炎症が繰り返される部位がいつも同じ
炎症性乳がんや乳管がんの可能性があるため、乳腺専門医の診察を受けることが重要です。
■ 気になる症状がある方は、放置せず専門医へ
「膿が出ているけど、痛みはないから大丈夫」
「市販薬で様子を見ればいいかな」
そう思って放置してしまうと、症状が悪化したり、乳がんの発見が遅れる可能性もあります。
乳房の異常は、ご自身では判断が難しいことが多いです。
乳輪下膿瘍か乳がんなのかを見分けるには、乳腺専門医による検査(エコー・細胞診など)が必要です。
■ 当院では、迅速な検査・治療に対応しています
当院では、
- 女性乳腺専門医による診察
- 超音波検査(エコー)
- マンモグラフィ
- 必要に応じた細胞診・針生検
- 再発予防のアドバイス(生活習慣の聴取など)
を通じて、患者さまの不安を取り除き、的確な診断と治療を行っています。
当院では、膿がたまっている場合の切開の処置も可能です。陥没乳頭の修正や、慢性的に続いている場合は、形成外科の受診をお勧めしています。
■ まとめ|迷ったら、まずはご相談ください
乳輪下膿瘍は、適切に治療すれば良くなる病気ですが、再発を防ぐためには生活習慣の見直しや乳がんとの鑑別も大切です。
タバコを吸っている方
疲れやストレスがたまりやすい方
乳輪や乳頭に違和感がある方
ひとつでも当てはまる場合は、お早めにご相談ください。
乳がんの早期発見にもつながります。