日本の乳がん検診は、個別化できている?| 乳腺専門医と考える乳がんリスク

Know your risk —「自分の乳がんリスクを知る」から始める
前回は「海外ではリスク別乳がん検診が進んでいる」というお話をしました。
では、日本ではどうなのでしょうか。
そもそも、日本と、日本以外のアジアと欧米では乳がん検診の体制や普及状況に違いがあります。
🔗過去のブログ 乳がん検診の国際比較:日本と海外で違いはある?
日本の乳がん検診受診率は50%未満にとどまっています。
一方、欧米では7割以上の女性が検診を受けています。
欧米では乳がん死亡率が減少しているのに対し、
日本では大きく下がっていない背景には、
検診受診率の低さも影響していると考えられています。
欧米では、
- 遺伝的背景
- 家族歴
- 個々のリスク
に応じて検診内容を調整する「リスク層別化検診」が進んでいます。
先日行われた日本乳癌検診学会では、日本でも、将来的には 個別化された検診が求められると話題になっています。
海外の乳がん検診では、「まず自分のリスクを知ること」から始めるのが一般的です。
- 家族に乳がんや卵巣がん、その他のがんの人がいるかを確認する
- その情報をもとに、医師と自分の乳がんリスクについて話す
検診方法(開始年齢、頻度や内容)を決める前に、自分がどのリスク層にいる可能性があるのかを知る
これが大前提になっています。
こうして、自分のリスクを知り、それに応じた検診を受けます。
それと同時に、気をつけるべき乳がんの症状とKnow your normal(自分の普段の状態を知っておくこと・ブレストアウェアネス)、がんを予防するための生活習慣などについて学びます。
🔗 Breast Cancer Foundation | Susan G. Komen® Breast Self Awareness
一方、日本では、検診を受ける時に簡単な問診はありますが、リスクについて話を聞く機会は少ないと思います。
また、家族同士で病気の話をする文化があまりなく、家族歴を正確に把握できていない方も少なくありません。
問題は知識不足というより、自分の状況を一緒に整理してくれる場が少なく、自分事として考える機会が少ないことかもしれません。
今回は、
1️⃣ 日本人の乳がんリスクの評価
2️⃣ 日本乳癌学会・診療ガイドラインの考え方
3️⃣ 高濃度乳房・超音波検査による検診に関する最新情報
を踏まえ、今の日本でできる現実的な対策を考えていきます。
日本の乳がん検診の基本
日本の公的検診は、
- 40歳以上
- 2年に1回のマンモグラフィ
が基本です。
これは、乳がんによる死亡を減らす効果が、科学的に確認されている方法
だからです。
なぜ日本では一律の検診なの?
理由は3つあります。
① 日本人に合ったリスク評価モデルが未完成
欧米のモデルをそのまま使うと、
日本人女性には合わない部分があります。
② 若い年代の乳がんが多い
40代での発症が多く、
検診開始を遅らせる判断が難しい。
③ 高濃度乳房が多い
マンモグラフィだけでは見えにくい人が多い。
それぞれについてもう少し見ていきます。
① 日本人の乳がんリスク評価モデルは?
結論から言うと 日本には「全国共通で使われている乳がんリスク評価モデル」は、まだありません。
私たち専門医は、実際には次のような要素を総合的に判断しています。
- 年齢
- 家族歴(母・姉妹の乳がん)
- 過去の乳がん・良性疾患の有無
- 出産歴・授乳歴
- 初経・閉経年齢
- ホルモン治療歴
- 乳房密度(高濃度乳房/デンスブレスト)
つまり「数式で自動的にリスクを出す」よりも、医師(主に乳腺専門医)の判断が中心です。
欧米との大きな違い
欧米では、
- 大規模な遺伝子データ
- ポリジェニックリスクスコア
- 国レベルの統合モデル
が進んでいます。
一方、日本では
- 日本人女性に特化したデータがまだ少ない
- 欧米モデルをそのまま使うとズレが生じる
という課題があります。
「日本人女性専用のリスクモデル」は、現在も研究段階です。
② 日本乳癌学会はどう考えている?
日本乳癌学会・関連学会の考え方は、非常に慎重です。
現在の基本方針
- 40歳以上:2年に1回マンモグラフィ
- これは「死亡率を下げる科学的根拠がある方法」
学会は
「科学的に確立していない方法を、全国一律には勧めない」
という立場を取っています。
では、リスク別検診は否定されているかというと、否定はされていません。
学会や専門家の間では、
- 高リスクの人には、より手厚い検診が必要
- 一律の検診では限界がある
という認識は共有されています。
ただし、
- 日本独自のエビデンスが不足
- 制度として導入するには時期尚早
という理由で、「個別判断」に委ねられているのが現状です。
③ 乳房密度(デンスブレスト)と検診方法の最新エビデンス
日本人女性の大きな特徴
日本人女性は、
- 乳腺が発達している人が多い
- マンモグラフィで白く写りやすい
これを
「高濃度乳房(デンスブレスト)」と呼びます。
デンスブレストの問題点
- がんも白く写る
- 乳腺も白く写る
がんが隠れて見えにくくなる
つまり、マンモグラフィだけでは、見逃しが起こりやすい
という問題があります。
超音波検査(エコー)による乳がん検診の効果は?
日本が世界に誇る研究:J-START試験
日本では、
- マンモグラフィ+超音波検査
- マンモグラフィ単独
を比べた大規模研究が行われました。
その結果、
- 超音波を追加すると、早期乳がんの発見率が上がる
- 特に40代女性で効果が大きい
ことが示されました。
これは日本人女性のデータです。
ただし、
- 精密検査が増える
- 良性でも「要精査」と言われることがある
「誰にでも超音波を追加すればよい」わけではありません。
MRI検査について
MRIは、
- 非常に感度が高い
- 高リスク女性では有効
一方で、
- 費用が高い
- 偽陽性も多い
日本では遺伝性乳がんなどの高リスク群に限定して使われるのが一般的です。
④日本では「若い年代の乳がん」が比較的多い
乳がんは高齢の女性に多い病気、と思われがちですが、
日本では40代の乳がんが非常に多いという特徴があります。
日本人女性の乳がんは、
- 40代後半に発症のピーク
- その後、60代にももう一つのピーク
という 2つの山がある分布を示します。
これは、50~60代以降に増える欧米とは異なる点です。
先のウィズダム試験では、
- 40代でリスクが低い人は検診を遅らせる
という選択肢も提示されました。
しかし日本では、年齢だけで「低リスク」と判断することができない という事情があります。
さらに40代の女性は、乳腺が発達している人が多く、マンモグラフィで乳がんが見えにくい という特徴もあります。
つまり、乳がんは起こりやすい、でも見つけにくいという、検診が難しい年代なのです。
このことが、日本で年齢だけで検診を減らす判断が慎重に行われている理由の一つです。
だからこそ40代では、
- 家族歴
- これまでの検診結果
- 乳房のタイプ
を考慮した 個別の判断 が重要ではないでしょうか。
知ろう、話そう、あなたの乳がんリスク。
日本ではまだ、
- 「あなたは低リスク」
- 「あなたは高リスク」
と明確に線引きできる段階ではありません。
しかし、制度は一律でも、
人のリスクは一律ではないのが現実です。
家族歴、年齢、乳房のタイプ、これまでの検診結果――
これらを整理したうえで検診を選ぶことが、
「正しく乳がん検診を受ける」ことにつながります。
制度は一律でも、私たち乳腺専門医は、すでに乳がん検診の個別化を念頭に置いています。
乳腺専門医のもとで検診を受けるメリット
① 自分の乳がんリスクを整理できる
② 検査の組み合わせを理由をもって選べる
③ 不安を必要以上に増やさない
大切なのは、
- 自分の体を知ること
- リスクを理解すること
- 医療の専門家と相談して検診を選ぶこと
という姿勢です。 あなた自身が、自分の体を知り、検査のメリット・デメリットを理解して、納得して検診を受けることが重要なのです。
最後に
乳がん検診は、義務ではありません。
あなた自身が納得して選ぶ、自分の体を守るための手段です。
将来、リスク別検診が標準になる可能性はあります。
その移行期にある今こそ、
正しく怖がり、正しく検診を受ける
そしてその第一歩として、
自分のリスクを知ろうとすることが大切です。
乳腺専門医と一緒に考える検診は、
今の日本において、もっとも現実的で安心な選択かもしれません。
不安や疑問があれば、どうぞ気軽にご相談ください。
あなたに合った答えを、一緒に見つけていきましょう。
あいかブレストクリニックの特徴
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