乳がん経験者のサバイバーシップケア~海外と欧米の違い~

乳がん医療は、かつて「命を救うこと」が最優先で語られてきました。
しかし、近年では“がんを治す”だけでなく、“がんとともに生きる”時代へと変わりつつあります。
その背景には、乳がんにかかる人の増加、そして治療を終えて元気に過ごすサバイバー(がん経験者)の方が増えていることがあります。
サバイバーシップケアとは
「サバイバーシップケア」とは、治療が終わったあとも、心と体の健康を支える医療のことです。
治療後の検査やお薬の管理だけでなく、生活や気持ちのサポートまでを含みます。
乳がんは、今では決して珍しい病気ではありません。
2021年には、日本で 約9万9千人 の方が乳がんと診断されました。
女性のがんの中で最も多く、およそ9人に1人が一生のうちに乳がんを経験すると言われています。
一方で、治療の進歩により、がんに罹患された多くの方が治療を乗り越えて社会で活躍しています。
全てのがん経験者(サバイバー)は2022年時点で 約341万人 にのぼり、これからさらに増える見込みです。
つまり、「がんになる人」が増えるだけでなく、「がんを経験して元気に生きる人」も増えている――
そんな時代だからこそ、治療後をどう支えるかが大切になっています
海外でのサバイバーシップケア
欧米では、サバイバーシップケアは医療体制の一部として定着しています。
最初の数年は腫瘍内科医(オンコロジスト)が中心になって診察を行い、
その後、状態が安定してきたらかかりつけ医(ファミリードクター/GP)へと引き継ぐスタイルが一般的です。
また、海外ではナースナビゲーター(Oncology Nurse Navigator)という専門職がいて、
患者さんの 相談窓口・案内役として として活躍しています。
この看護師は、情報提供、受診調整、心理支援、ケア間の橋渡しなど 重要な役割を担っています。
これらの体制の強みは、地域医療との連続性と包括性が保たれていることです。
副作用や生活習慣の指導、再発チェックだけでなく、
・検査や受診の調整
・情報提供
・心のケア
・生活や仕事の相談
など、チーム全体で患者さんを支える仕組みが整っています。
日本の現状は?
一方、日本では、治療後のフォローを乳腺専門医(多くは手術を担当した乳腺外科医)が担当することが多いのが現状です。
腫瘍内科医や乳がん看護認定看護師はいますが、充足していません。
乳腺専門医は、マンモグラフィや超音波検査などを自ら行えるため、
再発のチェックや画像診断を高い精度で行える強みがあります。
また、もし異常が見つかった場合にも、
すぐに必要な検査や治療にスムーズにつなげられるという安心感があります。
現在、日本では年間 約10万人が乳がんを発症し、約1万5千人が命を落としています。
一方で、早期発見・早期治療ができれば、生存率は高いことも分かっています。
だからこそ、患者さん一人ひとりに最適なフォローを継続する意義は大きいと言えます。
専門医によるフォローは、
- 早期に異常があれば対応できる
- 他科との速やかな連携
- 患者教育・心理支援を含むトータルケア
という面で、非常に有用です。
病院とクリニックが連携する“日本型”のフォロー
しかし、すべての患者さんを大病院だけで長くフォローし続けるのは現実的ではありません。
大きな病院には、手術や高度な治療を行う役割があります。
そこで注目されているのが、病院とクリニックが連携する地域でのフォローアップ体制です。
たとえば、
- 病院では、高度な検査・治療を担当
- クリニックでは、定期検査・副作用の管理・生活相談などを担当
- 双方が情報を共有して、必要に応じて連携
といった“チームで支える形が広がりつつあります。
この仕組みは、「医師の専門性」と「通いやすさ」の両立を目指した、日本ならではのサバイバーシップケアといってよいのではないでしょうか。
なお、日本では、一般のかかりつけ医(内科医など)がフォローを担うパターンはまだ少なく、ほとんどは乳腺専門医が常駐する乳腺クリニックと病院との連携です。
「病診連携」と言われるこのモデルの意義は、「専門性」と「利便性」のバランスを取ること。
患者さんが「遠くて混んでいる大病院に通い続けなければならない」という負担を軽減しつつ、専門医による質の高いケアを受けられる体制を目指せます。
特に、罹患数とサバイバー数が増え続けている今、「すべてを病院で抱える」のではなく、医療資源を地域に分散して使うことが重要です。
クリニックでいつでも身近に専門的な医療を受けられるのは、患者さんにとっても安心につながることでしょう。
まとめ
海外(欧米)では、治療直後は オンコロジスト がケアを担当し、その後 GP(かかりつけ医)に移行する、いわゆる「共有型フォロー」が一般的です。さらに ナースナビゲーター が患者さんのナビゲーション役として支援をします。
一方日本では、多くの場合 乳腺専門医 がそのままフォローを担っています。病院に勤務する専門医の負荷を減らすために、病院とクリニックが連携することが増えています。
この違いは、医療体制・専門職制度の違いだけではなく、患者さんの価値観、期待感の違いもありますので、一長一短と言えそうです。
海外で治療を受けた方に話をきくと、海外の看護師はとても親切にしてくれたが、医師と話す時間はほとんどなく不安であったとの声がありました。
一方、日本では、大きな病院ではなかなか担当医も看護師も忙しそうで話しかけにくい、との声もききます。これを補完できるのが、クリニックではないかと思います。
治療技術の向上により、5年生存率・10年生存率が改善し、乳がん経験者(サバイバー)の数は増加し続けており、「乳がんを治す」フェーズだけでなく、「治療後をどう支えるか」が、今後の医療の鍵になってきます。
今後、日本の乳がん医療が目指せるのは、
専門性の高いフォローと、地域で支える仕組みの融合ではないでしょうか?
当クリニックとしても、地域の病院と連携しながら日本型のサバイバーシップケアを実践していきたいと思っています。
当院の特徴
- 乳腺専門医による正確な画像診断
- 全検査は女性技師または女性医師が担当
- 予約制で待ち時間が少なく、所要時間は約1時間
- 異常が見つかった場合、精密検査・治療の対応可能
あいかブレストクリニックでは、地域の皆さまが安心して日々を過ごせるよう、乳腺専門医として丁寧な診察・検査を行っています。
胸の症状が気になるときはもちろん、症状がなくても 年に一度の乳腺検診 を受けていただくことをおすすめしています。
女性スタッフだけなので、安心して受診していただけます。
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