石灰化について 〜検査と経過観察の選択肢〜

こんにちは。今回は、乳がん検診や精密検査でよく耳にする「石灰化」、特に カテゴリー3の石灰化 の取り扱いについてお話しします。
石灰化とは?
マンモグラフィでよく見つかる「白い粒のような影」が石灰化です。カルシウムが沈着してできます。
石灰化ができる理由
- 炎症、外傷、加齢による変化
- 線維腺腫や乳管内乳頭腫などの良性腫瘍、乳腺のう胞
- 授乳や女性ホルモンの影響による分泌物
といった 生理的・良性の変化 で起こることが多いのです。
一方で、がん細胞が増えるときに細胞が壊死したり分泌物を出したところにカルシウムが沈着し、石灰化として見つかることもあります。
カテゴリー3ってどういう意味?
マンモグラフィの結果は「カテゴリー」という段階で表されます。 石灰化の大きさ・形・並び方・周囲の構造の乱れなどを見て判断します。
カテゴリー3は「良性の可能性が高いけれど、悪性を完全には否定できないため、念のため経過をみましょう」というグレーゾーンです。カテゴリー4、5に比べると、がんの可能性はかなり低めです。
がんの可能性は数%~10%と言われています。生検数、がんの診断数から算出するため、施設により異なります。
それだけ、施設によって生検をするか、経過観察をするか、取り扱いが異なっているとも言えます。
生検(細胞・組織を取る検査)の限界
「はっきりさせるために生検を」という選択肢もありますが、石灰化は少し難しい点があります。
- マンモグラフィガイド下の生検(ステレオガイド下生検)
マンモグラフィで座標を計算し、そこに針を進めて組織を採取します。
ただし、乳房の厚みが薄かったり、石灰化が胸壁に近い場合は針が届きにくく、取れないことがあります。 - 外科的生検(フックワイヤーガイド下生検)
上記の方法が難しいときに行います。石灰化の場所にワイヤーを刺して目印にし、外科的に切除して診断します。精度は高いですが、体への負担は大きくなります。
良性の可能性が高いときの選択肢
カテゴリー3の石灰化に対しては、次のような対応を組み合わせます。
- MRIで詳しく調べる
血流やがんの特徴をとらえやすく、追加の判断材料になります。MRIで所見がなければ、より安心材料になります。閉経前の方は月経の周期に合わせての撮影をお勧めします。また、造影剤という薬剤を使用して撮影をするため、喘息・アレルギーが複数ある方や腎機能の悪い方は検査できないことがあります。 - 経過観察
半年後や1年後に再びマンモグラフィを行い、石灰化が変化していないか確認します。
良性の石灰化は長期間ほとんど変化しません。 - 必要に応じて生検を
マンモグラフィの石灰化は良性寄りに見えても、その他の画像所見や経過、年齢、リスクなどから、がんの可能性が否定できない場合もあります。ご自身に、メリット・デメリットをよく検討していただいて選択します。
DCIS(非浸潤性乳管がん)とは?
石灰化の中には、まれに DCIS(非浸潤性乳管がん) が隠れている場合があります。
- 乳管の中だけにがん細胞がとどまっている状態
- 石灰化として発見されることが多く、進行はゆっくり 数年~10数年という単位
- 命に関わることはほとんどなく、落ち着いて対応できるタイプ
よくある質問(Q&A)
Q. がんじゃないのに、生検をするの?
A. 形や並び方が「典型的に良性」であれば、経過観察で十分なことが多いです。マンモグラフィ以外の検査を行って、ご本人と相談のうえで、生検を検討することがあります。
Q. 経過観察で大丈夫?
A. 多くの場合大丈夫です。もしがんだったとしても、DCISなど、進行がゆっくりなタイプが多いため、急に命に関わることはありません。
Q. どんな人は特に注意が必要?
A. 家族歴(乳がんの親族がいる)、遺伝的リスク(BRCA遺伝子)などがある方は、より慎重に経過観察が必要です。
当院での対応について
当院では、
- MRI検査が必要な場合は、連携している病院で受けていただき、結果も含めて丁寧にご説明します。
- マンモグラフィガイド下の生検が必要な方は、専門の設備を持つ病院へご紹介しています。
患者さんお一人おひとりにとって、最も安心できる方法を一緒に考えています。
患者さんへのメッセージ
カテゴリー3の石灰化は「ほとんどが良性」です。
検査や経過観察には不安がつきまといますが、私たち医療者は一人ひとりの画像所見や背景を丁寧に見ながら判断しています。
「石灰化=すぐにがん」と思わず、過度に心配しすぎず、一緒に見守っていきましょう。
必要なときは検査を、そうでないときは経過観察を――そのバランスを大切にしていきます。
当院では患者さんと一緒に相談しながら、最適な検査・観察の方針を決めています。どうぞ安心してご相談ください。
ご予約・お問い合わせ
- Webまたは電話での予約制
- 検査内容は当日相談可能
📞 電話予約:0797-38-7171
LINEでも問い合わせできます
🌐 Web予約はこちら
