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乳がんは、がん細胞の特性や受容体の状態に基づいていくつかのサブタイプに分類されます。
これらのサブタイプは、治療方針や経過に大きく影響します。乳がんのサブタイプを理解することで、患者さんごとに最適な治療を提供できます。
初期の乳がんでは、手術だけでは再発のリスクを減らすことが出来ないことが多く、手術の前後で、薬物治療を行う場合が多いです。使用する薬物はサブタイプによって大きく異なります。
ここでは、簡単にサブタイプごとの薬物治療を紹介しますが、乳がんの薬物療法は、日々アップデートされていますので、常に最新の情報を得るようにしてください。
1. ホルモン受容体陽性乳がん(ルミナルタイプ)
ホルモン受容体陽性乳がんは、がん細胞がエストロゲン受容体(ER)やプロゲステロン受容体(PR)を持っているタイプの乳がんです。 乳がん全体の約70%がこのタイプ(ルミナルタイプ)です。
エストロゲンやプロゲステロンは女性ホルモンのこと。
女性ホルモンは、閉経前の女性では主に卵巣で作られます。閉経後は卵巣からの分泌がほぼなくなって、副腎や脂肪組織が少量のエストロゲンを生成します。男性も少量のエストロゲンを産生します。
治療: 女性ホルモンが、「受容体」に結合すると、がんの成長を促進します。 そのため、このタイプの乳がんでは女性ホルモンを抑える、ホルモン療法が有効で、再発のリスクを減少させます。
ホルモン療法には、LH-RHアゴニスト、タモキシフェン、アロマターゼ阻害剤などがあります。閉経の有無によって、使用する薬物が異なります。
このタイプの乳がんは、ルミナルAとルミナルBに分けられ、やや性格が異なります。
ルミナルA乳がんは、ホルモン受容体陽性で、HER2陰性、かつ低増殖率のがんです。最も予後が良いサブタイプで、再発リスクが比較的低いです。
治療: 主にホルモン療法が行われ、化学療法は再発リスクが高い場合に限られます。
ルミナルB乳がんは、ホルモン受容体陽性で、HER2陰性または陽性、かつ 細胞分裂の速度が速いがんです。ルミナルA型よりも再発リスクが高く、より積極的な治療が必要です。
治療: ホルモン療法に加え、再発リスクが高い場合は化学療法やHER2陽性なら分子標的治療も併用されます。
2. HER2陽性乳がん
HER2陽性乳がんは、がん細胞がHER2(ヒト上皮成長因子受容体2)というタンパク質を過剰に発現しているタイプです。このタイプの乳がんは増殖が速く、再発リスクが高い傾向にあります。
治療: トラスツズマブ(ハーセプチン)、ペルツズマブ(パージェタ)、T-DM1(カドサイラ)などの分子標的治療が非常に効果的です。これに加えて化学療法やホルモン療法が組み合わされることがあります。
3. トリプルネガティブ乳がん (TNBC)
トリプルネガティブ乳がんは、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、HER2のいずれも陰性のタイプの乳がんです。このサブタイプは、ホルモン療法やHER2に対する治療が効かないため、治療が難しいとされています。
治療: 化学療法が治療の中心となります。一部の患者さんでは、免疫療法やPARP阻害剤などの新しい治療法が有効です。