10代のころの不安が、いまの私の診療の原点になりました
医師としての道を歩き始めてから、もう20年余り経ちました。
今は乳腺外科医として、日々たくさんの女性と向き合い、診療にあたっています。
その中でよく、「どうして乳腺外科を選んだのですか?」と聞かれることがあります。
振り返ってみると、私の原点は、10代の頃に感じた“言葉にならない不安”でした。
知識があれば、相談できる場所があれば
10代のある時期、私は身近な人を立て続けに亡くしました。
幼なじみが白血病で亡くなり、間もなく祖父も病気で旅立ちました。
大好きだった人たちが突然いなくなるという経験は、
10代の私にとってとても辛いできごとでした。
その頃の私は、同級生との関係や自分の体調にも悩んでいました。
朝起きられない日々、気分の落ち込み。
でもそれを不調とは思えず、誰にも相談できませんでした。
心も体も調子が悪いのに、うまく言葉にできなかったのです。
今なら、あれは“思春期のホルモンのゆらぎ”や“心が出していたSOS”だったとわかります。
でも当時の私は、何も知りませんでした。
もっと体のことを知っていれば。
もっと病気について知っていれば。
もっと相談できる場所があれば——
「誰かに相談できていたら、もっと楽だったかもしれない」
この思いが、私の原点になっています。
あの頃の自分のような人の力になりたい
だから私は、医師になろうと思いました。
中でも女性特有の悩みに生涯にわたって向き合える乳腺外科に興味を持ち、専門分野にしようと感じるようになりました。
ちょっとした不安でも、命にかかわることでも。
どんなことでも、安心して話せる場所が必要です。
そして、知ることで少しでも心が軽くなり、自分の体を大切に思えるようになる。
そんな診療を、私は目指しています。
あなたの不安に、ちゃんと耳を傾けたい
今、私のクリニックにはさまざまな年代の女性が来てくださいます。
そして、どんな方も「こんなことで相談していいのかな」と
不安そうな顔で扉を開けられます。
でも、それでいいのです。
「こんなこと聞いていいのかな」
「これって放っておいて大丈夫かな」
そんな小さな不安が、あなたの大事なサインかもしれません。
だから私は、いつも思います。
10代の頃の自分にしてあげたかったように、
あなたの声にならない不安にも、ちゃんと耳を傾け少しでも軽くしたい。
そして、「ここに来てよかった」と思ってもらえる場所でありたい。
それが、私の診療の出発点であり、これからも大切にしていきたい想いです。